フォビオン現像テクニック(最終回)屋内スポーツは流し撮りで動きを表現する!
写真撮影において、最も難しいものの一つが屋内スポーツだと思います。
そもそもスポーツなので動きが速いからシャッター速度は速くしなければいけない。けれども、屋内は照明でしか明るくできないので、光量は絶対的に不足している。さらに、観戦する場所から被写体までの距離が遠いです。
明るく長い、高級な望遠レンズがなければ迫力のあるシーンを撮ることは難しいです。しかし、そういうレンズは値段も高く、なかなか素人には手を出しづらいです。
長さだけなら10万円くらいから500mmくらいのズームレンズを買うことはできますが、ズームだとどうしても明るさが足りなくて、ISO感度を上げるしかありません。そうするとやっぱり画面がざらついたり、色がおかしくなってしまいます。
僕が持っているレンズで一番長いのは300mm F4ですが、これだと屋内スポーツの撮影はかなり難しいです。もちろん、カメラがISO3200でも綺麗に撮れるのなら何とかなりますが、あいにくフォビオンはそういうセンサーではありません。
今回は、このような厳しい環境の中でどうやって撮ればいいのか、とりあえず一つの方法を紹介しようと思います。
さて、大相撲は毎年名古屋で開かれるので、7月の暑いさなか、カメラとレンズを抱えて撮影に行って来ました。
大相撲のチケットは案外高くて、とりあえず一番安いチケットを買ったら土俵までの距離が数十メートルという、かなり厳しい状況でした。300mmでは土俵全体が入ってしまい、大相撲らしい迫力ある写真は撮れそうにありません。
仕方なくISOを上げましたが、それでもシャッター速度が足らず、激しく動く力士がブレてしまいます。
ノイズまみれ
大相撲の流し撮りなんか今までやったことなかったので、さっそく練習を始めました。
難しい
難しい
おお!?
なんか上手いこといったのが一枚だけありました。
ということでこれを現像しましょう。
後ろに座ってる観客や左にいる行事の色が混ざっておかしい感じなので、とりあえず一気にモノクロにしてしまいます。
いつもはホワイトバランスをモノクロにするんですが、今回はたまたま彩度0にしました。
おお、いいかも
行事や観客がモノクロにすることで背景に消えて、炎のような揺らめく感じになりました。この方向で現像を進めましょう。
とりあえず例によってコントラスト+2.0、シャドウ-2.0にします。
迫力が出てきた
まだちょっと明るいような気がするので、露出を-1.0に、フィルライトを0に、そして白いところを飛ばすためにハイライトを+2.0にします。
臨場感
とりあえずこれでいいや、ということで完成。JPEGに保存します。
どうでしたか?屋内スポーツは明かりが足りないので、暗い望遠レンズしか持っていないと、とても大変です。
ISOを上げて撮れば何とか見れる程度の写真は撮れますが、なかなか作品レベルまで持っていくのは難しいです。
そういう時は発想を切り替えて、流し撮りをすることで動きそのものを表現すれば、他の人とはまた違う、面白い写真が撮れます。難しい状況でも工夫すれば何とかなるものです。みなさんもぜひ挑戦してみてください。
さて、十六回と長く続いた連載ですが、ひとまずこれで一旦終了します。
僕が初めてDP2を買ってから3年弱、試行錯誤しながら身につけた現像ノウハウはこれまでの連載で全て書いてきたつもりです。フォビオンセンサーはいろいろ短所がありますが、撮影や現像を工夫することで、どんな状況でもいい写真が撮れる、素晴らしいセンサーだということが伝わったのなら、これにまさる喜びはありません。
2012年3月8日、新型センサーを搭載し、価格を大幅に下げたSD1 Merrillが発売になりました。僕もさっそく手に入れて撮影を始めています。新しいセンサーがどういう写りをするのか、何に気をつけて撮影や現像をすればいいのか、僕自身まだ何もわかっていない状況です。
新しいメリルセンサーを扱うノウハウが十分溜まったと判断したら、このフォビオン現像テクニックも再開して、使いこなすための記事を書こうと思っています。今はとりあえず、試行錯誤しながらカメラと格闘しようと思います。
それまではしばらくのお別れです。ここまで読んでいただいてありがとうございました。
ではまた次回!
フォビオン現像テクニック(第十四回)DP1の風景は六本の光芒で輝きを増す!