フォトキナ2018 シグマ新製品発表会
(司会)こんばんは、紳士淑女の皆さま。今晩の私たちシグマの発表にお集まりいただきありがとうございます。この忙しいフォトキナの開催中に、私たちのために時間を割いていただいたこと、大変感謝いたします。
今回のフォトキナでは私たちシグマの新製品を紹介したいと思います。
しかし、その前に、一つお知らせしなければならないことがあります。おそらくここにいる方々は、もうすでにご存じかもしれませんが、ライカ・パナソニック・シグマの三社は戦略的協業を行うことを本日発表しました。
シグマはLマウントプラットフォームの製品を何も発表していませんが、このプレゼンテーションの最後に、Lマウントの将来に向けたシグマの開発計画をお知らせしようと思います。
さて、それではシグマのエキサイティングで革新的な新製品の数々をここで紹介していきたいと思います。こちらをご覧ください。
(会場爆笑)
もうお飲みになりましたか?(笑)もしまだでしたらぜひお試しください。
実は、あまり言いたくはないのですが、今日の発表はとても長いです。もし、イギリス風の冷えていないビールがお好みでしたら、最後まで発表をお聞きください。しかし、通常の冷えたビールがお好みでしたら、どうぞ席をお立ちになってあちらにある冷たいビールをお取りください。私の発表中に食べ物を召し上がっていただいてもかまいません。どうぞリラックスして参加いただきたいと思います。
これはシグマのイベントなのでとてもカジュアルです。シグマは製品も含めてすべてカジュアルなので、どうぞくつろいでください。私自身もカジュアルな人間ですので、いつもリラックスしています。
さて、今回の新製品の発表の前に、私たちの会津工場についてお知らせしたいと思います。
私たちは新しいマグネシウム工場を会津工場に設立しました。この工場を開設するまでは、私たちは他の会社にマグネシウム製の部品を外注していました。しかし、マグネシウムのコストはとても高いので、私たちの要求に見合う部品を作れる会社はほんの少ししかありませんでした。
この問題を解決するために、私たちはマグネシウム製の部品を自社で生産することに決めました。
最悪の事態を想定して、私たちはマグネシウム棟を主力工場から離れた場所に建設しました。(会場爆笑)
いや、実は本当の話なんです。マグネシウムにはこうした性質があるので、自社でマグネシウム工場を持とうと思う会社は少ないんです。通常はマグネシウム加工を専門とする他社に外注します。おそらくですが、私の知る限り、カメラ製造会社のうちマグネシウム工場を持っている会社は一つもないと思います。間違っていたらすみません。けれども、自社でマグネシウム工場を持つのは非常に稀なケースだと思います。
これが私たちのマグネシウム棟の外観です。この工場で、非常に高品質なマグネシウム製の部品を低コストで生産できるようになりました。これはシグマのユーザーにも大きなメリットがあると思っています。なぜなら、マグネシウムを使ったカメラやレンズを低コストで生産することで、製品をより低い価格でユーザーに届けることができるからです。
これは建設中の写真です。昨年の初夏に建設を開始し、今年の初春に完成しました。工場は既に稼働中です。
お気づきになった方もおられるかもしれませんが、今年のフォトキナで発表した新製品には、この工場で生産したマグネシウム部品が使われています。
さて、では新製品の紹介を始めましょう。
今日は計8本のレンズを紹介したいと思います。
コンテンポラリーラインから1本、アートラインから2本、スポーツラインから2本、そして、シネレンズが3本です。
では、コンテンポラリーラインから始めましょう。56mm F1.4 DC DN Contemporaryです。
このレンズのコンセプトは、コンパクト・軽量・高画質です。このレンズは幅が66.5mm、高さが59.5mm、重量はわずか280gで、とてもコンパクトです。
左から、16mm F1.4、30mm F1.4、56mm F1.4です。ひょっとしたらこの16mmと56mmの写真は逆なのではと思う方もいるかもしれませんが、これが正しいです。一番大きいレンズが16mmで一番小さいものが56mmです。
これは単に、私たちが選んだレンズの設計の違いによるものです。これらのレンズは高画質とコンパクトさを両立させることを目的に設計しました。
実を言うと、現在発売中の16mmと30mmはソニーEマウントとマイクロフォーサーズマウントユーザーに非常に人気があります。どちらも高い画質が評価されています。実際に画質はアートラインレンズと比較しても遜色ありません。
今回の新しい56mm F1.4は既存の2本のレンズと同じコンセプトで作られています。発売は11月、価格は税込みで429ユーロです。他の地域では税率によって値段が変わるかもしれません。
次にアートラインより2つのレンズをご紹介します。
皆様ご承知のように、シグマにはすでに35mm F1.4と50mm F1.4があります。どちらも40mmと似た焦点距離です。しかし、これも有名な話ですが、この焦点距離の小さな差は、画像に大きな違いをもたらします。
また、この40mmを既存の35mmや50mmと区別するために、さらに高い画質を実現しました。実を言うと、このレンズの目標は「アートシリーズを超える」ことなのです。そして、私はそれが実現できたと確信しています。
私はこの40mmが新しい「伝説的レンズ」になると思っています。
最新のアートシリーズのレンズと同様、40mm F1.4も防塵防滴構造になっています。ゴムOリングにより全体がシーリングされています。
発売は11月ですが、値段はまだ決定していません。しかし、税込みで1000~1300ユーロくらいを想定しています。もちろん、急に気が変わるかもしれませんが。(会場爆笑)おそらくこれくらいです。
このレンズの目標は「最高の28mm F1.4を作ること」です。
ベンチマークはニコンの28mm F1.4とカールツアイス オータス28mm F1.4としました。ご存知のように、これらのレンズは非常に高性能です。どちらも性能は突出しています。その画質が素晴らしいことを認めたうえで、それをさらに超えることを目標にしました。そして、私はそれが達成できたと自負しています。
先ほど紹介しました40mmと同様、28mmも防塵防滴構造です。発売は2019年の1月です。これも値段はまだ確定していませんが、同様に1000~1300ユーロあたりを考えています。
続いて、スポーツラインから2本のレンズを紹介します。
これは短時間に大きく焦点距離を変えなければならない時に、非常に役に立ちます。
これは10倍ズームレンズです。それだけを聞けば「画質は悪いんじゃないか」と思う方もおられるかもしれません。しかし、私たちは画質を妥協したりはしません。このレンズの目標は「本当のプロ写真家に向けて作ること」なのです。
私たちがこの困難な目標を達成できたのは、以前に50-500mmを生産していたからです。このモデルは既に生産中止になっていますが、60-600mmをプロ用に開発するために、50-500mmを開発した時の経験と技術が役に立ちました。
このレンズの開発で最も困難だったのは、重量です。高画質を達成するために、このレンズでは25枚ものレンズを使用しました。もちろん、軽量化のためにプラスチック製の部品を使用するのですが、通常のプラスチックでは十分な強度が確保できませんでした。したがって、このレンズではマルチマテリアル構造を採用しています。
こちらの図をご覧ください。私たちは主に3種類の高性能素材を使っています。赤い部分がCFRP。CFRPとはカーボンファイバー強化プラスチックの略です。このプラスチックにはカーボン繊維が配合してあります。これによって高い強度を確保しつつ、非常に軽量に作ることが可能になりました。実はこの素材はとても高価です。だいたいアルミニウムの3倍くらいのコストがかかります。
黄色い部分はTSCです。熱変化安定素材という意味です。この素材はアルミニウムと同じ熱膨張係数を持ちます。
これらの高性能素材のおかげで、私たちはこのレンズの重量をかなり抑えることができました。
他のスポーツシリーズのレンズと同様、この60-600mmも防塵防滴構造を採用しています。可動部は完全にゴムOリングでシーリングされており、レンズ前面は撥水・防汚コーティングが施されています。
このレンズには他にも特徴があります。レンズに内蔵されているジャイロスコープセンサーは、手振れ補正を水平方向、垂直方向だけではなく、あれ?
水平、垂直、…
(聴衆)「Diagonal(対角線)」
Dai…?
(聴衆)「Diagonal(対角線)」
対角線。すいません、ありがとう(笑)対角線の方向に作動します(笑)
また、ズームロックは全ての焦点距離で機能します。レンズ前面は直進ズームが可能です。マニュアルオーバーライド機能。三脚座は90度ごとにクリックが付き、アルカスイス互換の雲台に使用できます。
この60-600mmの導入により、シグマは3本の600mm級レンズを持つことになりました。私は望遠ズームを使用するユーザーはこの中から最高の一本を見つけることができると思っています。150-600mmコンテンポラリーは気軽に持ち出すことができます。150-600mmスポーツは、サイズよりも画質を重視するもっと本格的な撮影に適しています。
60-600mmは多様な撮影シーンを高画質で撮影する時に最適です。
ここで、ショートフィルムをご覧いただきたいと思います。この中でフランス人の写真家が、このレンズの利便性について語っています。
すみませんが照明を落としてください。ありがとう。どうぞお楽しみください。
ありがとうございます。
60-600mmの発売は10月。価格は税込みで1899ユーロです。
このレンズの目標は「同クラス最高の光学性能」です。この目標を達成するために、FLDガラスを9枚、SLDガラスを1枚使用しました。FLDは蛍石とほぼ同等の光学性能を持つガラスです。私の知る限り、9枚もの蛍石や同等のガラスを使ったレンズは他にありません。贅沢に高性能素材を使用したからこそ、目標とする光学性能に到達できたと思います。
レンズは当然、防塵防滴構造で、Oリングで完全にシーリングされています。
この70-200mmの発売により、シグマは3本のF2.8ズームレンズを用意できるようになりました。14-24mm F2.8、24-70mm F2.8、70-200mm F2.8です。
実はこの会場にはジャーナリストやマスコミ関係者以外に、取引している流通や小売業の方々もいらしています。その方々に謹んでお勧めしたいのが、この3本のレンズをキットとして販売することです。これは大きなビジネスチャンスになることでしょう。(会場どよめき)
ひょっとしたら、この中に、シグマが販売している別のF2.8ズームレンズのことをご存知の方がおられるかもしれません。
そう、120-300mm F2.8です。したがって、販売店の皆様におかれましては、さらにこれを付け加えた4本をキットとして販売すれば、より大きなビジネスチャンスになるかと思います。(会場笑い)
売り上げが伸びます(笑)(拍手)
(会場爆笑)
すいません、もう一つだけ。もうこれから私が何を言うのかお分かりかと思いますが、ご静粛にお願いします。これが今日のプレゼンの一番いいところだからです。(会場爆笑)
シグマにはもう一つ、F2.8ズームレンズがあります。それがこちらです。
(会場爆笑)
200-500mm F2.8です。(拍手喝采)
さて、販売店の皆様、もしこのキットが売れたらその月はもう働く必要がありません。(会場爆笑)
残りはハワイのビーチで過ごすだけで充分です。謹んで以上のキットの販売をお勧めさせていただきます。
さて、70-200mmに戻ります。発売は12月です。価格はまだ決定していませんが税込み1300~1600ユーロあたりを想定しています。
次はシネレンズです。
2週間前に私たちはアムステルダムのIBC展で3本のシネレンズを発表しました。28mm T1.5、40mm T1.5、105mm T1.5です。ご承知のように、これらのレンズはアートシリーズと同じレンズを使用しています。
この3本が加わることで、シグマのフルサイズ用単焦点シネレンズは合計10本になりました。これでプロの動画撮影者が必要なレンズが揃うことになります。
これに既存の3本のズームレンズを付け加えることで、シグマのシネレンズは合計で13本になります。
さて、ここでもう一度シグマのシネレンズで撮影されたショートフィルムをご覧いただきたいと思います。このショートフィルムはRED Monstro Cameraで撮影しました。ご存知の方もおられると思いますが、RED Monstroで使用している撮像センサーはフルサイズよりも大きいです。幅が少しだけ長くなります。しかし、シグマのシネレンズはRED Monstroで使用してもほとんど問題はありません。
この動画はフランスのモンブランで撮影しました。景色は完全に真っ白な冬山と綺麗な青空で、ご承知のようにこれは口径食を確認するには一番厳しいシチュエーションです。しかし、この動画ではほとんど問題は見つからないでしょう。どうぞご確認ください。
照明を落としてください。
(拍手)
ありがとうございます。
シネレンズはアートシリーズと同じレンズを使用しています。そして、アートシリーズはフルサイズの画像の端でも高画質を維持しています。フルサイズよりも広い範囲に光を届かせていますので、REDに使用しても高画質です。
さて、最後になりました。
本日ここで発表できる新製品はありません。しかし、Lマウントシステムの今後の計画についてお話ししたいと思います。
全部で6つの内容について発表させていただきます。
一つ目です。私たちはフルサイズフォビオンセンサーを搭載したLマウントカメラを発売いたします。もちろん、このフルサイズフォビオンセンサーは新規開発したものです。発売は2019年を予定しています。
二つ目。シグマSAマウントを搭載した新しいカメラは今後開発いたしません。今後はLマウントに注力していきます。
もちろん、これからも既存のSAマウントカメラは生産を続けますが、新しいSAマウントカメラは開発しません。
三つ目。一眼レフカメラ用のレンズは今後も開発していきますので、SAマウントレンズは今後も開発・製造・販売を継続いたします。なぜなら、私たちにはSAマウントカメラのユーザーがいるからです。当面はSAマウントレンズも継続します。
この二つのマウントアダプターで、Lマウントユーザーは幅広いレンズシステムが使用できることになります。Lマウントカメラユーザーは、当然Lマウントレンズを使用できます。シグマSAレンズはLマウントアダプターを介してLマウントカメラに使用できます。シグマ製のキヤノン用EFレンズは、同じくアダプターを使ってLマウントカメラで使用できます。
つまり、Lマウントシステムは、ほとんど完全と言っていい様々な種類のレンズを、かなり早い段階で使えるということです。
五つ目。シグマ製のLマウントレンズは2019年から発売を開始します。
さらに、これからLマウント用のレンズを新しく開発します。これらのレンズはミラーレスカメラ専用の設計になります。
最後は、マウント交換サービスです。もし、あるレンズにLマウントの設定があったら、そのレンズはLマウントに交換できまし、その逆も可能です。
さて、これが私たちのLマウントの開発計画のまとめです。新しいフルサイズフォビオンセンサーカメラ、新規SAマウントカメラの開発中止、SAマウントレンズの開発継続、SA-L・EF-Lマウントアダプター、Lマウント専用レンズの開発、マウント交換サービスです。
シグマは、他社にない、高性能な製品を開発することで、Lマウントシステムを拡充させていきます。
さて、本日の発表はほとんど終わりです。ご清聴いただき大変感謝いたします。しかし、最後に一つだけお見せしたいものがあります。新しいシグマ会津工場の動画です。
これまで作ってきた工場の動画と同様、今回も当社で実際に働いている従業員を取り上げています。ここに映っているものは全て実際のものです。従業員やその家族、撮影は実際の工場で行い、従業員の家やその近所も映っています。シグマの全てはリアルです。シグマにあるフェイクはCEOである私だけです(笑)
全てのパーツを会津工場で製造し、世界中に届けています。
今回のメッセージは、私たちは製品を情熱をもって作っている、ということです。私の願いはこの「情熱」を、製品を通じて世界中のユーザーに届けたい、ということです。どうぞ、新しい会津工場の動画をお楽しみください。
照明を消してもらえますか。
(拍手)
ご清聴ありがとうございます。これで本日の発表は終わりです。製品のサンプルは会場の後方に用意してあります。また、お食事とお飲み物も引き続きお楽しみください。
本日はありがとうございました。
(元動画)