フォビオン現像テクニック(第十二回)クロスプロセス現像で想像力の限界を突破する!
写真に限らず趣味はほとんどそうだと思うのですが、長く続けるための最大の困難は、マンネリです。
フォビオンの画質は写真の可能性を新しく見つけてくれるという大きな魅力を持つのですが、それでもフォビオンばかりで撮影を続けていると、いつしか新鮮な気持ちが薄れてきます。
一眼レフならばレンズを変えることで写せるものも変わってきますから、比較的長く楽しめるのですが、DPのような固定焦点のカメラだけ使っているとそうもいきません。毎週末に撮影旅行に行くわけにもいかず、気がついたらカメラも防湿庫に入れっぱなし。そういう人もいるのではないかと思います。
さて、こういったマンネリを打破する最も手っ取り早い方法は、現像方法を変えることだと僕は思います。
どの人もそれぞれの好みがあって、特定の被写体はある程度決まった現像パターンに落としこんで、その基準内で現像を行う、そういう人が多いのではないでしょうか?
もちろん、それぞれの人がそれぞれの美意識で現像を行うので、それはそれでいいと思うのですが、自分のライブラリを眺めて似たような写真ばっかりだと、やはり少々ヘコむものです。普段やらないような方法で現像して、新鮮な気持ちを取り戻すのも一つの手です。
ということで、今回はそういうマンネリを打破する方法を紹介します。
まずこの写真を見てください。
横浜で撮った写真なのですが、最初はこの写真を現像していました。
オートで開いた状態はこれです。
色が薄い
なんか色が薄いなということで、例によってコントラスト+2.0、シャドウ-2.0、ハイライト+2.0にしました。
コントラストを上げると色が濃くなる
まだちょっと色が足りないような気がしたので、露出を少し下げて-0.3に、彩度を+0.4に、フィルライトを+0.3にしました。
いい感じ
これは朝の6時頃に撮って、朝焼けが強く当たっていたので、それを思い出しながらカラーを少し調整。7C+4Mにします。
ちょっと非現実感
とりあえずこれはこれでいいやということでJPEG保存しました。
さて、ここからが本番です。
SIGMA Photo Proの環境設定では、新しく開くファイルをどのように現像するのか選べる項目があります。
個人的にこの設定がベスト
この一番下の「前回の調整設定で開く」をチェックしておくと、新しいファイルを開いた時に、前のファイルで保存した設定がそのまま適応されるんですね。
これは似たような写真を同じパラメーターで現像するのにとても便利なのですが、今回はこの機能を別の目的で使います。
ある写真の現像に使った設定を全く別の画像にそのまま当てはめることで、意図しない現像がされます。そして、その出来た写真をそのまま最終稿として決定してしまうんです。
ということで、観覧車の写真の設定を保存したまま全く別の写真を開きます。
おお?
あれ?これ良いんじゃない?と、まず最初に思いました。
上の観覧車の写真で朝焼けを強調するために設定した7C+4Mや、ハイライトやコントラストがこの写真にもいい雰囲気を出しています。
通常であれば、僕はこの色にはしませんし、雲を飛ばさないためにハイライトを+2.0までは上げないはずです。
試しに、上の絵は忘れて普通に自分のやり方で現像したのがこっちです。
空の青さを強調するために雲にホワイト指定を合わせ、警告表示を出しながらハイライトを飛ばさないようにします。コントラストは+2.0にまであげていますが、今回は基本的にそれだけで、他のパラメーターはあまりいじっていません。
さて、どっちがいい写真か。
別の写真のパラメーターをそのまま使用した例
自分のいつものやり方で現像した例
僕は、上の方が好きです。自分の中に全くない色使いやハイライトの飛ばし方が、逆に新鮮です。下の絵はどちらかというと無難に収まって魅力に欠けています。
ということで、他の写真で使用したパラメーターはそのままいじらず、今回はこれで決定としました。JPEGに保存します。
どうでしたか?
フォビオンを長く使っていると、自分の中で決まりきったパターンが出来上がってしまい、いつの間にか同じような写真ばかり現像してしまう、マンネリ状態になってしまうことがあります。
こういう状況を打破するためには、普段は使わないようなパラメーターを選べばいいのですが、中々自分の中で固まってしまった観念から抜け出すのは難しいです。
そういう時は、ある一つの写真で使ったパラメーターを他の写真でもそのまま使う、クロスプロセス的な発想で現像すると意外な発見があって面白いです。
これまでとは違う写真を現像でき、自分の中にある写真というものの幅が広がっていきます。これを積極的に利用して、いろいろな種類の現像を楽しめるようになってください。
それでは今日はこれまでです。
ではまた次回!