フォトキナ2016 山木社長プレゼンテーション(その1)

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本日はお忙しい中お集まりいただきまして大変ありがとうございます。シグマを代表して篤くお礼申し上げます。ありがとうございました。
 
今日のプレゼンテーションでは3つのことについてお話させていただきます。まず最初に現在シグマが置かれている経済状況について説明いたします。次に、今回フォトキナで発表した3つの新製品について説明をします。最後に私たちの新しい製品ラインであるシネレンズについて説明したいと思います。
 
さて、始めましょう。
 
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これはここ4~5年間の交換レンズ市場のグラフです。ご存知のように、交換レンズ市場は依然として縮小を続けています。もし今の状況が今年の年末まで続けば、市場規模は2012年と比べて40%減少するだろうと予測しています。
 
覚えていらっしゃる方もおられるかもしれませんが、シグマは4年前、2012年のフォトキナでアート・スポーツ・コンテンポラリーの新ラインを発表しました。この新ラインの成功のおかげで、我が社の売上高は2012年比で27%上昇しました。イエイ!(拍手)

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実際には、私たちがこのような成功を収められたのは、今晩ここにおられる方々のサポートがあったからだと思っています。どうもありがとうございました。
 
もう一つの理由は、私たちが革新的な製品を作ってきたからです。そのうちの製品のいくつかは、私たちの成長の助けとなりました。私は「革新」こそが、現在のような厳しい経済状況に打ち勝つ唯一の方法だと強く信じています。
 
昨年発表した、革新的な製品のいくつかをここでご紹介しようと思います。

まずは24-35mm F2 DG HSM Artです。これは世界初のフルサイズ用F2ズームレンズです。

20mm F1.4 DG HSM Art。これも世界初の20mmF1.4を達成したレンズです。
 
50-100mm F1.8 DC HSM Art。中望遠のF1.8ズームレンズです。このスペックのレンズも世界初となります。
 
これらはシグマの革新的な製品のうちの一部でしかありません。しかし、私はこれらの製品が、カメラ市場で新しい需要を作り出したと信じています。

これは中国の方々にとって奇妙に映るようで、どうしてシグマだけがこのような革新的な製品を作れるのか不思議だそうです。そして、彼らはシグマを「黒魔術使い」の会社だと呼ぶようになりました(笑)

個人的にこういうのは大好きなんですが(笑)、皆さんご存知のように私たちは黒魔術使いの集団ではありません。実際にシグマにいるのは野心的なエンジニアと、熱心な職人なのです。

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シグマの研究開発部門にいるエンジニアと会津工場にいる職人は、互いに協力して、こういった革新的な製品を作るために、ずっと熱心に仕事をしてきました。今後もカメラ市場の一助になるような、あるいはより活性化させるような製品を作っていきたいと思います。


さて、ここでフォトキナで発表した3つのレンズについてお話します。

最初は12-24mm F4 DG HSM Artです。

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シグマは広角ズームレンズのパイオニアであり続けました。1979年に発売した21-35mmは世界初の広角ズームレンズでした。

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それ以降、シグマは最も広角なズームレンズを発売する会社であり続けました。

その後も、18-35mm17-35mm15-30mm、と発売していき、2003年には最初の12-24mmの広角ズームレンズを発売しました。
 
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しかし、2年前の2014年、キヤノン11-24mmを発売しました(笑)。そして、このレンズによって私たちの「最も広角なズームレンズを発売する会社」という記録が途絶えたのです。
 
私がこのニュースを初めて聞いたとき、「マジかよ!」と思わず口に出してしまいました(笑)。なぜなら、私たちはすでに今回の12-24mmの開発を始めてしまっていたからです。正直に言うと、キヤノンは素晴らしいレンズを開発したと思います。性能も品質も素晴らしいです。キヤノンはものすごい製品を作りました。
 
しかし、このレンズの弱点は値段です。この値段では限られたプロ写真家くらいしか、レンズを手に入れることができないでしょう。
 
私たちの記録は破られてしまいましたが、すでに進めていた開発を止めることはしませんでした。その代わりに、当初掲げていた目標を達成することに集中しました。

当初の目標とは、「最高の品質を、手に取りやすい価格で提供する」ということです。そうすれば、より多くの人が超広角の写真を楽しむことができるようになります。
 
この困難な目標を達成するために、私たちは大口径グラスモールド非球面レンズを開発しました。

高画質な広角レンズを製造するためには、非球面レンズの生産が鍵となります。キヤノン11-24mmに大口径の非球面レンズを採用しています。しかし、キヤノンはレンズの生産にいわゆる「研磨技術」を使っています。これは文字通りレンズを一枚一枚研磨して、非球面を作っていく作業です。研磨は大口径の非球面レンズを生産するのに以前から行われている方式です。
 
しかし、シグマも同じようにレンズを研磨したら、生産コストを下げることは不可能になります。私たちの目標は大口径非球面を低コストで生産することです。そのために、新しく大口径の非球面レンズをグラスモールド(レンズを加熱して金型にプレスする方式)で生産する技術を確立しました。
 
グラスモールドそれ自体は、非球面レンズを安価に生産する手段として非常に優れているのですが、これまでは小さなレンズしか生産することはできませんでした。
 
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この図の右端のレンズが、今回の12-24mmで採用した非球面レンズです。実際の口径は82mmになります。中央のレンズは20mm F1.4で使用している非球面レンズです。このレンズは現在市場に出回っているグラスモールドの非球面のうちで、最も大きなものの一つです。見てわかるように、新しい非球面レンズはそれまでのレンズと比較して非常に大きくなっています。これは成形技術としては大きな飛躍となるものです。
 
このレンズのために、実はかなり大きな投資をしました。なぜなら、将来的には研磨方式ではなく、グラスモールドが非球面レンズの生産の中心になっていくと確信しているからです。将来を見据えて、今回の開発を行いました。

この新しい非球面のお陰で、レンズの性能自体も非常に高い物になりました。MTF値はとても高く、歪曲はほとんどありません。

レンズの発売は2016年の10月を予定しています。価格は未定ですが、より多くの人が広角レンズを楽しめるようになると思います。
 







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