フォトキナ2012 山木社長のプレゼンテーション(その2)



3つのラインはそれぞれ明確なコンセプトを持ち、今後発売する全てのレンズは3つのラインのどれかに属することになります。

最初のラインは『コンテンポラリー』です。

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コンテンポラリーラインは最新の技術を使い、高画質と小さなサイズを両立しています。このラインのレンズは多目的で、ユーザーの様々な要望に応えることができます。

コンテンポラリーラインのレンズは以下のシチュエーションに使われることを想定しています。

・旅行
・家族写真
・スナップ
・その他の様々なシチュエーション

二つ目のラインは『アート』です。

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アートラインは最高の画質と光学性能を追求しています。最高の性能と芸術的表現を求める人のためのレンズです。次のような状況を想定しています。

・風景
・マクロ
・スナップ

最後のラインは『スポーツ』です。

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スポーツラインは高い光学性能と、高度な動体捕捉能力を備えています。

・野生生物
・野鳥
・スポーツ
・航空機

スポーツラインは以上のような被写体を補足するのに高い性能を発揮します。

私たちは3つのライン、コンテンポラリー、アート、スポーツを示すことで、被写体や撮影のあり方を押し付けているわけではありません。このラインを示すことで、レンズを設計するときに、考え方をはっきりさせることが目的です。

今回のフォトキナで、それぞれのカテゴリーごとに1つずつ、新しいレンズを紹介していきたいと思います。

コンテンポラリーラインからは17-70mm F2.8-4 DC MACRO OS HSMを発表します。

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このレンズには最新の技術をふんだんに使用しています。そのことによって、高い画質を維持しながら、大幅にサイズを縮小することに成功しました。

これが現行のレンズと、最新のレンズとの大きさの比較です。最新の技術を使うことで従来比で30%のサイズ縮小に成功しました。これはとても大きな達成で、私たちのエンジニアは素晴らしい仕事をしてくれました。とても満足しています。

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このレンズは発売までにもう少し時間がかかります。発売予定は2013年の初頭で価格は未定です。

アートラインからは35mm F1.4 DG HSMを発表します。

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このレンズはコンセプト通り、ひたすらに画質を追求し、最高の光学性能を達成すると同時に、高いレベルでの芸術的表現が可能になっています。

MTFチャートはこのクラスのレンズの中では最高の数値を示しています。それに加えて、このレンズは軸上色収差を極限まで減らすことを目的としました。

軸上色収差はフォーカス面の前後に現れる色収差です。皆さんは画面周辺で色収差が起こっているのをよく目にしたことがあると思いますが、それは倍率色収差と呼ばれる収差です。

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これはとあるメーカーの35mm F1.4レンズのサンプル写真です。お分かりいただけるように、フォーカス面の前方にはマジェンタの、後方には緑の収差が発生しています。これが典型的な軸上色収差です。

正直に言うと、このレンズはとても良いレンズです。私がここで強調したいのはF1.4といった大口径レンズでは、色収差があるというのは問題でも何でもなく、当たり前のことだということです。

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公平を期すために、同じサンプルを私たちの50mm F1.4レンズで撮影しました。ご覧いただけますように、同じような軸上色収差が発生しています。私たちの85mm F1.4でも撮影しましたが結果は同じです。

つまり、大口径レンズには軸上色収差がつきものなのです。しかし、私たちは新しい35mm F1.4ではこれを減らしたいと思いました。これがサンプル写真です。

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ご覧のように、35mm F1.4レンズでは高いMTFレベルを維持しながら、軸上色収差を低減しています。このことによって、ピント面からフォーカスが離れていく時に、極めてスムーズでクリアな画像を撮ることが可能になります。私はこの達成にとても興奮しています。

35mm F1.4 DG HSMは2012年の11月に発売します。値段については今考え中で、いいアイデアがある方はぜひ教えていただきたいと思います。あまり安すぎる価格にはできないのですが(笑い)。

スポーツラインからは120-300mm F2.8 DG OS HSMレンズを発表いたします。

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このレンズの光学設計は、現行のレンズと同じです。しかし、機械部分、電子部品、ファームウェアなどを最新のものに変更し、新しいコンセプトに合うように作り直しました。

例えば、このレンズは防塵防滴構造を持ち、設定をカスタマイズする事が可能です。このカスタマイズについてはあとで詳細を述べたいと思います。

このレンズの発売は2013年の初頭を予定しています。価格は未定です。

この3つの新製品に加えて、レンズをカスタマイズするためのソフト『SIGMA Optimization Pro』をここで発表させていただきたいと思います。

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このソフトを使うことで、ユーザ-はレンズをカスタマイズすることが可能になります。ここでいくつかの機能をご紹介したいと思います。

まずはピント調節機能です。

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この機能は、カメラボディに付いているピント調節機能ととても良く似ています。ボディの調節機能では焦点距離に関わらず、最近接から無限遠までのフォーカス範囲の中から、一点を選ぶことしか出来ません。

しかし、このソフトを使えば、焦点距離ごとに最適な一点を指定することができます。これは今までよりも洗練された機能で、これによってユーザーは各レンズを最適化し、自分の使用目的により合うレンズにカスタマイズすることができます。

もう一つの機能はフォーカスリミッターのカスタマイズです。

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私たちの新しい120-300mmレンズにはフォーカスリミッターが付いています。しかし、ユーザーの使用方法によって、それぞれ求めるリミッターの範囲が異なると思います。

例えば航空機を撮影する場合、リミッターの範囲は無限遠からごくわずかに離れた範囲に限定したいでしょう。それがこのソフトでは可能になります。つまり、このソフトによってユーザーが出来る範囲が広がるのです。

また、このソフトを使えばユーザーはAFスピードを変更することができます。

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例えばスポーツラインのレンズの場合、滑らかなフォーカスよりもフォーカス速度を優先したいユーザーは多いと思います。レンズ製造会社として、私たちはいつもフォーカス速度と滑らかなフォーカスのどちらに重点を置くべきか悩んでいました。

それゆえ、フォーカス速度を何よりも優先するユーザーのために、このオプションを用意しました。

もちろん、ファームウェアのアップデートもできます。新しいファームウェアが出たらユーザーは簡単にアップデートすることができるようになります。

このソフトは2013年の初頭に公開され、私たちのHPから無料でダウンロードできます。

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レンズのチップとパソコンをつなげるために、私たちはUSBドックを用意しました。これも2013年の初頭にソフトの公開と同時に発売されます。値段はまだ未定です。

以上が私たちがフォトキナで発表する新製品です。


さて、より良いレンズを生産するために、私たちは最高の品質管理体制を整えました。

本日発表するのは、従来のものとは全く違う、新開発のMTF検査装置です。私たちはこれを『A1』と呼んでいます。

A1は4600万画素のフォビオンセンサーを使用しています。

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この素晴らしく解像度の高いセンサーを使用することで、私たちはこれまでよりも高い空間周波数を測定・検査することができます。空間周波数はレンズの解像度を示します。この新しいMTF検査装置によって、最高レベルの解像度を測定することが可能になりました。

私たちの目的は、工場から出荷される全てのレンズが設計通りの高い品質を持つようにすることです。今後出荷されるレンズは全て、この新しい検査装置によってチェックされます。これからは品質の良いレンズだけを出荷することができるよう、検査体制を整えました。


最後にご案内したいのは、最高の製造現場です。

シグマのレンズは全て、小さな部品から金型まで、レンズ生産に最適化された製造ラインのもと、全て日本で生産を行なっています。

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現在では日本だけで生産を行う企業はごくわずかとなってしまいました。

私たちの企業風土は工場のある会津の風土に大きな影響を受けています。綺麗な空気、清浄な水、熱心で勤勉な人々。私たちの製品は世界中のプロ写真家や写真愛好家に受け入れられています。それは私たちの製品が本物の職人たちによって作られているからだと自負しています。

ここで、私たちの会津工場を紹介する短いビデオをご覧いただきたいと思います。私たちの真摯な態度、熟練の技、そして製造に対する情熱を紹介したいと思います。




(万雷の拍手)

ありがとうございます。本当に、ありがとうございます。

彼らが私たちの製品を作っている人たちです。私は彼らを誇りに思います。


さて、これで私の発表を終わらせていただきます。私たちの考えや新製品の詳細は新しいウェブサイトsigma-global.comで見ることができます。今回お話させていただいた新しいビジョンが詳しく書かれています。ぜひご覧ください。

また、私たちのユーザーに感謝の心と、私たちの哲学を伝えるために、私たちがコンセプトブックと呼ぶ写真集を用意しました。この本では私たちの新製品と工場を紹介しています。ご退出の折にはぜひとも手にとってご覧いただきたく思います。私たちの写真に対する取り組みをより深く知ることができると思います。

また、レンズのバヨネットと同じ真鍮で出来た、ペーパーウェイトを用意しました。バヨネットにアルミを使っている会社がいくつかありますが、バヨネットはとても大事な部品ですので、私たちは今でも真鍮で作ることにこだわっています。このペーパーウェイトは少し重いですが、ぜひともお持ち帰りください(笑い)。

ここに今回発表したレンズを、まだプロトタイプですが用意していますので、発表が終わったらぜひともお手にとって試してください。

本日はお集まりいただきまして大変ありがとうございました」