シグマ18-250mm F3.5-6.3 DC Macro OS HSM




シグマの新レンズ18-250mm F3.5-6.3 DC Macro OS HSMは一見すると、たくさんの種類がある便利ズームのラインナップに、もう一つの選択肢が付け加わっただけ、という印象を受ける。

しかし、この新しいレンズを詳しく見てみると、その外見からは予想もつかないような、驚くべき新技術がふんだんに盛り込まれている事がわかる。



複合素材TSC(Thermally Stable Composite)






複合素材とは、最新の技術を使って作られる、複数の素材を組み合わせた素材のことである。複合素材が特に有名になったのはモーターレースの世界で、かつてシャパラルなどのメーカーがシャーシに複合素材を使っていた。現在ではほとんどの航空機に複合素材が使われており、もはや私達の生活の一部になっている。

例えばポリカーボネートは複合素材の原料として有名であり、ガラスを25%含んだポリカーボネートの複合素材は、カメラのボディやレンズ鏡筒の素材として幅広く使われている。この複合素材を最初にレンズに使用したものの一つに、タムロンの200-400mm F5.6がある。

さて、今回取り上げるシグマの新しい複合素材TSCは、従来の複合素材よりも変形しにくいため、より精度の高い製造が可能である。したがって、新型の18-250mmは前のモデルと比べてより小型になり、さらに最短撮影距離も短くすることに成功した。

TSCのもうひとつの特徴は、その名前「Thermally Stable Composite(耐熱性複合材)」にも明らかなように、気温の変化に伴う素材の膨張・収縮が極めて少ないということである。18-250mmといったレンズを好んで使用するのは旅行者や、アフリカのサバンナから北極圏まで世界各地を飛び回る風景写真家だろう。その点から考えても新素材の採用は歓迎すべきだ。

TSCポリカーボネートと比べて25%高い弾性を持つ。このことだけでも特筆に値すべきことだが、より重要なのはアルミニウムと同等の熱収縮率を持つことから来る、他の金属部品との親和性の高さである。このTSCの特性によって、470gという軽量でありながら、より機械的・光学的に精度の高いレンズを作ることが可能になったといえる。

TSCが今回18-250mmに使われたことで、今後のシグマのレンズにこの複合素材が採用されるだろうことは明白だ。例えばソニーNEXと共通設計の、マイクロフォーサーズ用19mmと30mmのレンズは、マイクロフォーサーズ専用に設計し直される可能性がある。TSCを使うことで、マイクロフォーサーズのフォーマットに合わせた、より小型のレンズを作ることが可能になるかもしれない。


新型18-250mmのもう一つの特徴は、マウントに真鍮を使っているということである。このことによって、マウント強度が高くなり、スムーズにレンズ交換が出来る。




AF用のモーターには超音波モーターHSMを採用しており、ボディに手ブレ補正機能のないマウントには、4段分の補正効果がある手ブレ補正機能が備わっている。








レンズ構成はとても豪華だ。両面非球面レンズを1枚含む合計3枚の非球面レンズと、特殊低分散ガラスを使用している。他のシグマのレンズと同様に、このレンズもβテストの段階から複数のマウントで逆光のフィールドテストを行なっており、逆光耐性は優秀である。





絞り羽根は円形絞りを採用しており、写真のように美しい丸ボケを表現することができる。




MTF曲線からは14倍ズームとは思えない良好なコントラストと解像度がうかがえる。非点収差がわずかながら存在するが、望遠端でも良好な性能である。