混迷するカメラレンズ市場でどう生き残るのか:シグマCEO山木氏インタビュー(その1)
円安は国産レンズメーカーのシグマにとって追い風となっている。しかし、増え続けるマウントに対応していかなければならず、レンズ事業は複雑化している。また、シグマにとってフォビオンセンサー搭載カメラは成功とは言いがたいのではないか。
シグマCEOの山木和人氏にとって、世界が変化する速度というのは、少し速すぎるのかもしれない。
シグマは日本を代表するレンズメーカーであり、レンズ事業においていくつもの成功を収めてきた。最近では35mm F1.4 DGがシグマの名声を高めるくらいの高い評価を受けている。
ボディの小さなミラーレスカメラが、これまでの一眼レフカメラのシェアを奪い続けており、競争に勝ち抜こうと各メーカーが躍起になっている。ソニー、富士フィルム、パナソニック、オリンパス、サムソン、ペンタックス、さらには、キヤノンとニコンもそれぞれミラーレス市場に参入した。
ミラーレスカメラの中で、レンズを自由に交換できるのはパナソニックとオリンパスのマイクロフォーサーズ勢だけだ。それゆえ、サードパーティのレンズメーカーであるシグマ、タムロン、トキナー、そしてツアイスといったメーカーは、参入するマウント選びを慎重に行う必要が出てきた。
もちろん、一眼レフの世界も単純ではない。レンズメーカーは二大勢力であるキヤノンとニコンをサポートしなければならないし、従来のフィルムカメラと同じ35mmフルサイズセンサーを搭載したカメラと、それよりサイズの小さいAPS-Cセンサーを搭載したカメラもあるからだ。
多くのプロや愛好家はフルサイズカメラを使用しているが、ボディの値段が高いのでAPS-Cの方が多く売れている。
さらに、もう一つユニークなカメラがある。シグマ自身のSD1だ。しかしこのカメラは、シグマのビジネスの手助けに全くなっていない。シグマの他のコンパクトカメラと同じように、SD1も大ヒットしてシグマの経営の手助けとなる可能性はあった。しかし、2011年の発売時に付けられた9700ドルという価格のせいでその可能性は消え去った。次の年にSD1の価格は3300ドルに下がり、現在は2300ドルになっているが、このカメラの売り上げはわずかだ。
世界最大の写真共有サイトであるFlickrにはこれまでSD1 Merrillで撮られた写真が3万8千枚ほどアップロードされているが、これはキヤノンの5D Mark IIIの一日のアップロード数、約7万枚の半分に過ぎない。
日本は長年に渡って円高で、製造業は輸出品が割高になってしまうので、これまでずっと苦しんできた。しかし、ここ最近の円安は、シグマのビジネスにとってかなり有利に働いている。
シグマCEOの山木和人氏はツイッターでの活動も有名だ。今回は氏にシグマのビジネスと、日本の製造業の現状について話を聞いた。
-ミラーレスシステムに参入するメーカーが増え、数多くのマウントが現れました。シグマにとって、どのマウントのレンズが一番売り上げが良いのでしょうか?また、従来の一眼レフ用レンズと比べてどれくらい売れているのでしょうか?
-たくさんの種類のマウントに向けてレンズを作ることは、シグマにとって大変なことなのでしょうか?
山木:多くのシステムに向けて同時並行でレンズを作りつつ、さらにそれぞれの性能の進歩に付いて行かなければならないのがやはり難しいですね。私たちは新しいファームウェアを提供したり、新技術をレンズに採用したりすることで、レンズが最新のカメラに最適な性能になるよう、常に努力しています。
-手ブレ補正機能はカメラボディに付いている方が良いのでしょうか?
山木:カメラ側、レンズ側、それぞれに長所短所がありますから、どちらが良いと言うことは難しいです。ただ、レンズメーカーとしては、手ブレ補正機能はレンズに入れたほうが、より多様性を保てるとは思います。そのほうが消費者にとっても購入時の選択肢が増えるわけですし。
一般的に、フルサイズ用のズームは明るいものであってもF2.8からです。APS-Cセンサーは被写界深度の面でフルサイズより不利ですが、F1.8という明るさなら、フルサイズに匹敵する、被写界深度の薄い写真を撮ることができます。
このレンズを設計をそのままにフルサイズ用に大きくして、27-53mm F1.8ズームのようなものを作ることは可能なのでしょうか?とても大きくなってしまいそうですが。
山木:そうですね、かなり大きくなると思います。サイズだけでなく、そのスペックで複数のマウントに対応させるのは大変です。とりわけニコンのマウントは小さいですから、それに合わせるのは難しいです。もちろん、それをつくるのは無理だとは言いません。これまでも私たちはいくつもの壁を打ち破ってきましたし、これからもカメラの進化に付いていきます。