写真が上手くなりたいんだがどうしたもんか(第四回)


商売じゃなければ別に上手くなる必要はないかもしれない。

でも色んなことに向上心を持って生きていたほうが自分のためにも世の中のためにもなるような気がする。

震災の直後に子供が生まれて、それを撮った写真が何千回もリツイートされて、ちょっとした明るいニュースを提供できた。

そういう世の中のためになるような写真を将来も撮るチャンスがあるかもしれないから、そういう時のために腕を磨いておきたい。

というような話でした。


これまで三回書いてきて、何となく自分なりの結論が見えてきたような気がするんですが、あんまり早く結論出しすぎるとろくなことがないので、もうちょっと保留したいなと。

自分では全く納得してないのに、社会的なあれこれに流されて仮決定のまま実行に移すと、大抵の場合失敗します。もしくは体が拒否して心身に異常をきたします。

僕は仕事でそういうのを経験してるので、趣味の写真くらいはじっくり納得行くまで考えて、そっから自分がどう進むか考えたいのですよ。

ということで、今回はSNS、特にflickrについて、ちょっと思うことを書いてみたいなと思います。


僕はflickrという場所は好きなんですよ。あそこで最初に写真あげて、最初に評価されて、上手い人の写真をたくさん見て、勉強して育ててもらったと思ってます。

んでも、今は距離を置いています。自分の写真に悩んでるのもあるんですが、あまり他の人の写真も見なくなりましたし、あそこで他の人と関係を作るのもあんまりしなくなりました。

何でかというと、SNSに長くいると、自分を客観視できなくなるからですね。もちろん全員が全員そうじゃないとは思うんですが、僕は弱い人間なので、他の人との関係や、自分の立ち位置、撮った写真の評価、そういう諸々に影響を受けて、自分が何なのかよくわからなくなります。


最初にそれを感じたのは、写真を始めて半年くらい経って、毎月毎月exploreに写真が選ばれるようになってからです。

自分の写真がexploreに入るのは嬉しいんですよ。flickrのその日に上がった写真の中でTOP500に入ったってことなので、自分の実力の証明であるわけです。

でもですね、flickrのexploreは純粋に写真の善し悪しだけで選ばれてるわけじゃないと思うんですね、たぶんですけど。写真の見られた数、favの数、コメントの数、タグ情報、グループ投稿、そういういろいろな要素が絡みあって、結果選ばれやすい写真と選ばれにくい写真が出てきてるような気がします。

あそこは「写真を共有するコミュニティサイト」なので、そのコミュニティ内部の活動で、写真の評価が変わるわけです。そうなると、絶対的に良い写真なのに、他と全く関わりがない写真は埋もれて、そこそこの写真だけど、他と多く関わってる写真は上に上がっていくわけです。

そういう風にコミュニティ内で微妙な序列関係ができてくると、例えば自分の写真のファンのような人が出てきます。で、そういう人達は、僕が何を上げてもfavを押してコメントを入れてくれるわけですよ。ありがたいですよ。ありがたいんですけど、何か違うなと僕は思うわけです。

何でかって、ダメな写真はダメだって評価されるべきだからです。そうじゃないと、自分で自分の立ち位置がわかんなくなってくるからです。

そんで、そういう評価を得る状態が常になってくると、自分の写真を撮るときも上げるときも、常に「ファンの目」や「これからされるだろう評価」を考えて上げるようになります。

例えばたくさん評価されたモチーフや手法の写真は、もう一度繰り返しても同じくらいの評価をされる可能性は高くなります。だから、同じ被写体、同じ構図、同じ手法を繰り返します。評価は麻薬なので、そこから逃げるのは難しくなります。


で、気づいたら自分は全然自由に写真が撮れてないし、本質的な部分で全く上達してないってことに気づくわけです。


自分が明確に撮りたいものを持って、確固たる表現を心がけていれば、他者の評価なんか気にしないで良いんですが、残念ながら僕は弱い人間です。そういうのを振りきれない。振りきれないから、逃げるしかない。なので、僕はこれまで数回、数ヶ月にわたって全く写真を撮らない期間がありました。

また、新しく撮るときも、基本的に同じモチーフ、同じ手法、同じ被写体は撮らないようにしています。あ、娘は別ですよ(笑)親ばかなので娘はいくらでも撮って上げてます。幸いなことに、親ばか写真はflickrではスルーされがちなので、あんまり評価を気にしないで気ままにとって気ままに上げてます。


今はとりあえず、flickrではあまり他の人とは関係を持たないようにしてます。いい写真だけリアクションを貰えて、ダメな写真はスルーされるようになっています。個人的には今くらいの距離感がちょうどいいかな、と思ってます。

心置きなく実験的な手法を試せるし、ファンも特にいないので、人の期待を裏切る心配をする必要もありません。



僕は写真始めて四年ですが、特定の誰かに習ったわけではないし、どこかの集まりに参加したこともありません。自分が上手くなろうと思ったら客観的な評価、他者からの批評が必要なんですが、ネット上ではなかなかそれは得られません。わざわざ他の人の写真のところに行って、これはテーマが曖昧だ、構図が甘いなんて書き込む人はいないわけです。普通の人はそれは荒らしだとしか思わないでしょう。

僕は基本的に批判はウェルカムな方だと思うんですが、見ず知らずの人からいきなり写真を批判されたらやっぱりびっくりして腹がたってtwitterだったらブロックします(笑)たぶんネットというメディアが、建設的な批判というものを生み出しにくくしてるんじゃないかなという気がします。パッと思いついたことを書けてしまうので、批判する側も相当訓練していないと、相手の気分を害さずに説得力を持たせることは難しいと思いますし。


ネット上のSNSを使って、一人で写真を撮り続けて、それでなおかつ上手くなり続けるというのは、やっぱり相当難しいのかもしれないという気がします。

リアクションがないと、やっぱり寂しい。だから、リアクションがもらえるような写真をついつい狙ってしまう。

でも、それが行き過ぎてしまうと、自分の写真を見失ってしまうかもしれない。それを止めれるのは自分だけだし、他の人はなかなかそれを教えてくれない。

関係を作りすぎず、切り離しすぎず、自分が周りと一緒に成長していけるような、そういう距離感を保ったままにできないか、そういう関係を作っていくことはできないか、そんなことをつらつら考えて、でも結局答えは出ません。

今はただ、試行錯誤を続けるしかないかな、という、そんな結論しか出て来ません。