DP2 Merrillレビュー&RX100、M9、NEX-7、X100との比較(その2)

素数についての考察





シグマが現在は子会社のフォビオンX3を使い始めた頃から、デジタルカメラの画素数をどのように数えればいいのかが問題になった。これが問題になるのはある意味で必然だったといえる。というのも、ベイヤーでは、例えば2000万画素あったとしても、全ての画素で輝度情報を得ているわけではないからだ。

ベイヤーは一つの赤と青に二つの緑を組み合わせており、そのうち主に緑だけが解像度に貢献している。青と赤は基本的に色情報としてしか扱われない。

それに対してフォビオンは対応する色の異なる画素が垂直に配置されているので、全ての画素で色情報と輝度情報を同時に記録できる。DP2 Merrillの画素数は4600万画素だが、そのうち3分の2は同じピクセル上に垂直に配置されているので、実際に出力される画像は4600万ピクセルよりも小さくなる。

このベイヤーとフォビオンの違いが問題を複雑にしている。ベイヤーは仮に2000万画素あったとしても、その全てが解像度に貢献しているわけではない。実際にはおおよそ画素数の3分の2くらいの解像度しか持たないことが多い。しかし、市場に出回っているデジタルカメラのほとんど全てがベイヤーを採用しており、条件は同一なのだから、このことが問題となることはほとんどなかった。しかし、そこにフォビオンが加わると問題になるのだ。

シグマはメリルセンサーの画素数を4600万画素だと公表しているので、問題がややこしい。もちろん、画素数だけを見れば正しいかもしれないが、ベイヤーの4600万画素と同等の解像を持つかというと、そうではない。シグマ自身もSD1を発表した時に、3000万画素のベイヤーと同等の解像度だと公表している。この解像度論争を決着させるには何らかの精査が必要だとは思うが、この3000万画素相当という発表は現実に近いと私自身は思う。

さらに、フォビオンはローパスフィルターを使っていないので、話はもっとややこしくなる。フォビオンはモザイクフィルターを使っていないので、偽色が発生せず、それゆえローパスフィルターを必要としない。それなので、フォビオンはローパスフィルターを使っている他のデジタルカメラと比較して、クリアで解像度の高い画像を作ることができる。しかし現在では、ニコンD800EやライカM9など、ローパスフィルターのないカメラが市場にいくつか出まわっており、問題は混迷を極めている。


とりあえず、この話はここで終わりにしたい。私自身もこの問題にはこれ以上の興味はない。ネット上では依然として議論が盛んなようだが、大半の人にとってはこれ以上深入りしてもあまり有意義ではないだろう。私の知る限り、写真に真剣に取り組んでいる人達は、スペック上の画素数よりも、実際に撮られた写真を見て判断することの方が多いからだ。彼らは数字には現れない様々な要素が写真の質を決めるということを知っているのである。

現実にはほとんどの状況で、だいたい1000万画素以上の画素数があれば十分である。それ以上の画素数が必要なのは巨大なプリントを展示する必要のある、一部の写真家だけだろう。もちろん、4000万画素や6000万画素、8000万画素といった画素数で写真が撮れるならそれに越したことはない。しかし、写真の質を決めるのは解像度だけではなく、他の様々な要因の組み合わせなのである。

シグマはDP2 Merrillの画素数を4600万画素だと公表し、大伸ばしにも耐え、ベイヤー3000万画素相当の解像度を持つとしている。実際の画像サイズは1500万ピクセルであり、これはAPS-Cサイズとしては全く他社に見劣らない数字だ。私自身の感覚で言えば、DP2 Merrillはおおよそベイヤー2400万画素から2800万画素あたりの解像度を持つのではないかと思う。しかし、上にも書いたが、実際の数字がどれくらいかはネット上の議論に任せて、あまり深入りしないほうがいいだろう。



比較


以下の写真はDP2 Merrillと私が所有しているカメラとの解像度の比較である。あまり厳密に測定したものではないが、これらのカメラをDP2 Merrillと比較することには意味があると思う。画像はできる限り同じになるように努力したが、これらのカメラはセンサーサイズも、レンズの焦点距離も、センサーの画素数もバラバラなので、その点を考慮に入れて判断して欲しい。

比較写真を撮影する時にはマニュアルで調節しながら撮る方法と、全てをカメラに任せてしまう方法とがあるが、今回は全てカメラに任せることにした。なぜならこれが実際の撮影状況に一番近いからだ。もちろんこのやり方には異論があるだろうし、不満を覚える人もいるかもしれないが、申し訳ないけれども、今回は撮り直しをする気はない。人生は短く私にはやるべき事が他にもたくさんある。個人的に私は今回の結果に満足しているので、不満がある方はご自身で比較写真を撮っていただきたい。

今回の比較はそのカメラの性能をしっかり示せたと、私は思っている。いくつかのケースで上手く撮影がいかなかったことがあり、その時は撮影をやり直していることを付け加えておこう。もし私の結果に不満があれば比較写真を送ってほしい。もしそれが私の結果を覆すようなものなら、ここにアップすることを約束する。

ここにあげるDP2 Merrillの画像はシャープネスをかけていない。シャープネスは十分かかっており、それ以上かける必要はないからだ。カメラとSPPのシャープネスのセッティングはどちらも0である。また、いくつかの画像ではシャープネスをマイナスにふった。他のカメラの画像はライトルーム4でシャープネスをかけてある。

SONY RX100

SIGMA DP2M           Sony RX100


現在発売されてるカメラの中で一番人気、というわけではないにしても、最も人気のあるカメラの一つが2000万画素のRX100だろう。私も他のレビューと同様に、このカメラには絶賛を惜しまなかった。上の写真はピクセル等倍である。RX100はDP2 Merrillと同じ焦点距離に設定して、できるだけ同じ画像になるように撮影している。どちらの画像もSPPとライトルーム4を使って最適な画質に調整している。ホワイトバランスはモザイク画の右目の同じ箇所を指定しており、全体の明るさも等しくなるように調整している。




SIGMA DP2M                  Leica M9


この比較は少し難しかった。私はライカMを35年近くに渡って使用しており、マグニファイヤーを使ってピントを合わせているが、それでもピントを厳密に合わせるのは難しい。このサンプルが他とは違いF8まで絞ってるのはそれが理由である。ほんの些細な違いかもしれないが、F5.6だとフォーカスが合わないことが多いのだ。

もちろん、それ以外にもズミルクスの50mmとDP2 Merrillの45mmという違いがあり、それは実際に撮影する距離を変えることで出来るだけ同じになるようにした。また、ちょうど撮影の時に太陽が建物の真上に来ており、そのせいでフレアが少し出ている。スタジオ以外でテスト撮影をするとこういったことが問題になってくる。それ以外はできる限り露出とホワイトバランスを合わせるように撮影し、M9の画像はシャープをかけてある。

実際に比較してみると、DP2 MerrillはM9にズミクロン50mmを付けたものよりも解像度が高いように思える。あまり大きな違いではないかもしれないが、それでも目で見てはっきりと分かるものだ。このことは、DP2 MerrillがM9の約10分の1の値段で買えるということを考えても特筆に値する。もちろん、M9はレンズ交換式カメラであるのに対し、DP2 Merrillは固定式だし、レンジファインダーでもない。この比較そのものが馬鹿げていると思う人もいるだろう。それでもこういった比較は面白いし意味があると思うので、一緒に楽しんでもらいたい。





SONY NEX7


SIGMA DP2M         SONY NEX-7


NEX7は私の最もお気に入りのカメラの一つである。この10ヶ月で8000枚以上の写真をNEX7で撮ってきた。このNEX7に使われている2400万画素のAPS-Cセンサーは現在いくつかの他のメーカーのカメラで使われており、今後もこのセンサーを採用するカメラは増えていくだろう。

今回使用した30mmマクロはあまり好きなレンズではないが、今回の比較でズームレンズを使いたくはなかったので、これが唯一DP2 Merrill焦点距離が等しいレンズだった。他のレビューサイトではこのレンズはあまり高く評価されてはいないが、中心の解像度に関して言えば素晴らしい評価を得ている。

他のズームレンズも試しにDP2 Merrillと比較してみたが、私が使用した限りではDP2 Merrillの解像度が最も高かったことは、ここで言及しておきたい。



Fuji X-100

SIGMA DP2M                    Fuji X100



様々な欠点や短所があるにも関わらず、私はX100の画質には満足してきた。これは本当に良いカメラだ。さて、こうやってDP2 Merrillと比較してみたのだが、違いは明らかだ。これ以上のコメントは必要ないだろう。




色の正確性


SIGMA DP2 Merrillマクベスカラーチャート
ホワイトバランスは下段の左から三番目に合わせてある



フォビオンの色の正確性については長い間ずっと議論の対象になってきた。私自身も昨年のSD1のレビューでこの問題を取り上げた。フォビオンの色は上手く表現できないのだが、とにかく独特なのだ。もし、今回のDP2 Merrillでの結果が同じメリル世代のカメラ、SD1 MerrillDP1 Merrillにも当てはまるなら、それらは同じ傾向を持つだろう。

ISO100とISO200では色の再現はさほど大きな問題にはならないが、ISO400を超えると色が偏り始め、ISO1600では色は滅茶苦茶になる。フォビオンは結局のところ低ISOカメラなのだ。もちろん、今更言うまでもないことかもしれないが。

今回私が気づいたのはシアンに偏る傾向があるということだ。これは比較的容易に修正できるが、注意が必要な場合もある。また、暗部にマゼンタが発生したり、ムラが現れることもある。これらはピクセル等倍にした時に気づく程度のもので、プリントした時にはほとんど問題にはならない。