フォビオン現像テクニック(第八回)春の写真は低彩度で静けさを増す!

SIGMA SD14 70mm MACRO F2.8 1/400 ISO100



3月に入って急に暖かくなりましたね。春ももうすぐそこです。

春といえばやはり梅や桜などの花。それらは写真にとっても華のある被写体です。ぜひとも撮影をマスターしたいものです。

とはいえ、春の花といっても薄く色づくピンクのサクラや、紅く匂う梅など、フォビオンでは扱いの難しい色が多いです。 第二回 でも説明しましたが、フォビオンにとってほとんど唯一の弱点といってもいいのが赤の飽和。今回はその弱点を乗り越える方法を紹介しましょう。これさえ読めば春の訪れが待ち遠しくなるはずです。


さて、さっそく今回の写真をオートで開いてみましょう。



イメージ 1
ベタッとしてる



ところどころ赤が飛んでますね。右上の部分なんかは絵の具でもこぼしたみたいにベタッとにじんでます。これじゃあせっかくの梅も台無しです。

赤が飽和してる時は露出を下げよ、というのが第二回でやったことなので、とりあえず露出を下げてみましょう。-2.0にしてみます。


イメージ 2
あれ?飽和がおさまらない



飽和が止まりません。困りました。画面は暗いのに色は飽和してにじんで見える。

露出を下げる現像は効果的な場合もあるんですが、今回みたいにうまくいかないこともあります。これを回避するためにはどうすればいいか。

その方法の一つが、色相をずらすこと。カラーホイールを使って赤が飛びでない色に全体を変えます。もうひとつは彩度を下げること。彩度を落とすことで飽和した色のディテールを取り戻すことができます。

とりあえず現像をオートに戻して、まず背景左上のオレンジっぽい部分をホワイト指定して全体を青くします。今回は19C+15Mにしました。その後彩度を-1.5にします。



イメージ 3
死生観



ぐっと雰囲気が出ましたね。

彩度を落とすと画面から華やかさがなくなりますが、それと引き換えに静けさや迫力、存在感のようなものが増します。フォビオンは色の情報だけでなく明るさの情報も豊富に持っているので、彩度を落としても絵の説得力は落ちません。

赤の飽和を抑えるときだけではなく、他のあらゆる被写体でも通用するのが、低彩度現像です。ぜひこれをマスターしてください。



さて、色を落とすとどうしても地味に見えます。なので、コントラストを上げて絵そのものの力を増やしてやる必要があります。

コントラストを+2.0、シャドウを-2.0、フィルライトを+0.4まで上げて、露出を-0.7まで下げます。露出警告を出しながら、画面の黒い部分と白い部分がわずかに警告に引っかかるような現像をします。最後に背後のボケとのメリハリを付けるためにシャープネスを+2.0にしました。



イメージ 4
ドラマチック!


とりあえずこれで完成。JPEGに保存します。


さて、いつもならこれで終わりなのですが、今日はもう少し別の方法を紹介します。


赤の飽和を抑えるために彩度を下げたのですが、やはり実際の花に近い彩度で現像したものも見たくなります。しかしSPPでは、これ以上彩度を上げることは難しいです。なので、フォトショップなどの別のソフトを使って彩度を上げてみます。

今回はプリンターを買った時についていたフォトショップエレメンツを使います。これで保存したJPEGを開いてみましょう。


イメージ 5


画質調整 → カラー → 色相・彩度と開き、彩度を+70まで上げます。


イメージ 6
フォトショップなら破綻しづらい



SPPオートで開いた時はベタッと潰れていた赤い花びらが、しっかりと階調を残して現像されています。

とりあえずこれを保存して、さっきSPPで保存した低彩度現像の写真と見比べてみましょう。



イメージ 7
SIGMA Photo Proで低彩度現像


イメージ 8
フォトショップで彩度上げ



どっちがいいですかね?


僕は、低彩度の方が好きです。梅の花という、春の訪れを告げるには、まだわずかに寒さの残る時期に咲く花。その冷たさや静けさを、上の写真のほうが上手く表現できているような気がします。

彩度を上げた方はやはり少し派手で、ありきたりの写真になってしまっているのではないかと。ということで、今回は低彩度の方を残して、フォトショップで上げた方はボツにしました。



どうでしたか?紅い梅の花という、フォビオンが苦手とする被写体でしたが、彩度を落とすことでまた違った雰囲気を持つ写真に現像することが出来ました。彩度を落とせば露出を下げなくても、赤い花びらの質感をうまく表現することができます。

また、その写真をフォトショップで再び彩度を上げることで、色の飽和を抑えつつ、高彩度の華やかな写真にすることも出来ました。この方法も知っておけばより表現の幅が広がると思います。

第二回で紹介した露出を下げる方法と共に、彩度を下げる方法、フォトショップで持ち上げる方法の三つを知っていれば、どんな赤い被写体が来ても怖いものなしです。みなさんもぜひマスターして春の訪れに備えてください。


SPPである程度まで現像して、最後は別のソフトで仕上げるやり方はフォビオンマスターJIN X3さんやcharさんもブログで公開されています。高度なテクニックも書いてあるのでぜひとも参考にしてください。






とりあえず今回はここまでです。



ではまた次回!



フォビオン現像テクニック(第十二回)クロスプロセス現像で想像力の限界を突破する!
フォビオン現像テクニック(第十三回)DP2+AML-1で至上のボケを堪能する!
フォビオン現像テクニック(第十四回)DP1の風景は六本の光芒で輝きを増す!