シグマ SD1 Merrill レビュー(その2)


以下の写真はスタジオや屋外など、様々なシチュエーションで撮られたSD1のサンプルだ。写真の下にあるHigh-Res(高画質)をクリックすれば等倍の画像が見られる。RAWファイルも公開しているので、現像を試してみたい方はシグマのウェブサイトにある無料の現像ソフトSIGMA Photo Proをダウンロードして欲しい。RAWファイルは一つにつき45MBもあるので注意されたい。今回のテストでは18-50mm F2.8-4.5 DC OS HSMを利用した。カメラのファームウェアは最新のver.1.04である。

(訳者注:たくさんのサンプルがあるので画像やRAWファイルは元サイトで確認してください)

サンプル写真

ポートレートはF8まで絞って撮ったのでとてもシャープである。撮影にはポップアップフラッシュを使ったが色はとても正確だ。RAWで撮影した画像はSIGMA Photo Proで現像した後フォトショップで調整してある。RAWで撮影すれば露光不足の調整も容易にできる。快晴の屋外で撮ったビルの写真はJPEGだとオーバーになってしまったが、RAWで撮ったものはオーバーであっても調整で適切な露出に戻すことができる。

レンズテスト

18-50mm F2.8-4.5 DC OS HSMはSD1で使用しても良好な結果だが、最高の解像度を出すためにはF7.1以上に絞る必要がある。茂みのサンプルではパープルフリンジや色収差が大きく出ているが、他の写真ではあまり目立たない。

ISOテスト

カメラ内JPEGとRAWからJPEGに現像したもの両方を掲載している。RAWから現像してホワイトバランスを合わせノイズリダクションをかけると結果が見違えるほど良くなるので、SD1で高画質の写真を撮りたかったら常にRAWで撮ることは必須である。その場合、SIGMA Photo Proを使わなければいけないので、すぐにネットに写真をアップロードしたり、使い慣れたソフトで編集をするのには多少手間がかかる。

ISO100から400までの結果は良好で、ISO800から1600まででもRAW現像をすれば実用上問題ない。これ以上になるとRAWでノイズリダクションをかけてもまだ不十分なので、できる限り避けた方がいい。

SIGMA Photo Proを使うのにはとても時間がかかる。100%に拡大した後でノイズリダクションの設定を変更しようとすると、最初から読み込みを始めてしまい、そこから100%のサイズで見ようと思ったらさらに時間がかかる。それ以外にも、通常のパラメーターを変更するだけでも時間がかかり、動作は遅い。高スペックのパソコンを使用してもJPEGTIFFに現像して保存するのには長い時間がかかる。

ホワイトバランス

JPEGとRAWから現像した画像を比較すると、RAWからグレーカード部分にホワイト指定してバランスを撮った画像の方がより正確である。

JPEG VS RAW

SD1は最高の画質で撮りたいのならRAWで撮影してSIGMA Photo Proで現像することが必要不可欠である。ライティングを完璧にすれば別だが、ほとんどの場合ではJPEGの画質は良いとは言えない。もちろん、JPEGを修正して、良い画質にすることも可能だが、一般的にJPEGを修正するのはとても難しいし、RAWから現像した画質にはやはり及ばない。RAWで撮影するとダイナミックレンジがとても広くなるので、JPEGでは失われてしまったハイライトやシャドウをRAWなら回復可能だ。

フィルターやエフェクトのような機能はないが、7つのカラーモード(スタンダード、ビビッド、ニュートラル、ポートレート、風景、JPEGの場合さらにモノクロとセピア)から好みの画質を選択できる。また、カメラ内セッティングでコントラスト、シャープネス、彩度を設定できる。

動画

SD1には動画撮影機能はない。

価格

このレビューの準備が半分くらい終わったところで、6300ドル(約50万円)のSD1を、2299ドル(約18万円)のSD1 Merrillとして再発売するという発表があった。イギリスにおけるSD1の価格は4999ポンド(約61万円)だったが、SD1 Merrillの価格はまだ発表されていない。SD1とMerrillは名前が違うだけで中身は同一である。

元々の5000ポンド近い価格設定であれば、最新のプロ用フルサイズカメラ、ニコンD4やキヤノン1DXが比較対象になっただろうが、価格改定後はそれよりはもう少し下のAPS-C2400万画素のソニーα77や、フルサイズ3600万画素のニコンD800あたりが直接の比較相手になる。

SD1に付属しているストラップはだいぶ使い勝手が良いものだが、元々の価格を考えるともう少し質の高いものであってもよいし、箱も何か限定バージョンを思わせるような仕掛けがあってもよいと思う。


シグマ SD1 Merrill 最終評価

シグマSD1はピクセルレベルで解像した、素晴らしい画質の写真を撮ることができるカメラだが、最高画質で撮るためにはRAWでの撮影と現像作業が不可欠である。カメラ内JPEGの品質はあまり高くはないので、他の機種と比較しても長所を見出すことは難しいし、JPEGだけを使うならこのカメラを保有する意味はほとんどないと言える。

5000ポンドという元々の価格から考えると、SD1の画質は素晴らしいものでなければならない。シグマもウェブサイトで「最高画質」を高らかに宣言している。もし、RAWで撮影して、SIGMA Photo Proで現像し、さらに他のソフトでレタッチを適切に行うことができれば、SD1は隅々まで解像した、被写体の質感をリアルに表現する、素晴らしい画像を生み出してくれる。1500万画素x3の4600万画素フォビオンセンサーはソニーα77のようなAPS-C2400万画素機と比較しても見劣りすることはない。もちろん、α77のような12コマ秒連写、フルHD動画撮影機能を備えたカメラとでは、SD1は使い勝手の面で明らかに劣る。α77はJPEGでも素晴らしい画質だ。

シグマとフォビオンのファンは、フォビオンセンサーから生み出される画像には立体感と本物を見てるかのような質感があり、これはベイヤーセンサーでは得られないものだと思っている。SIGMA Photo Proを使ったSD1のRAW現像は時間と手間がかかるが、フォビオンから生み出される画質をどう評価するかで、その手間の意味合いも変わってくる。今回のレビューのために撮影した画像を現像するだけで恐ろしいほど時間がかかったということは、ここで言及しておきたい。

大幅な値下げもあり、扱いやすさと画質の良さから、SD1はだれにでも勧められるカメラとなった。上に書いたRAW現像の手間のことを納得して使うのならSD1はとても良いカメラといえるだろう。


シグマ SD1 Merrill 長所


新型フォビオンセンサー
防塵防滴マグネシウムボディ
IRフィルターを取り外すことで手軽に赤外線写真が撮影可能
1ピクセルレベルの高解像
豊かな色彩

シグマ SD1 Merrill 短所


JPEGでのノイズ
値下げ後でも少々高めの価格
メモリーカードスロットが1つだけ
上面液晶パネルがなく、ファインダーに顔認識センサーがない
動画撮影やライブビューがない
SIGMA Photo Proは動作が遅い
メモリ書き込み速度が遅い
バッテリーがあまり持たない


結論: シグマSD1はRAWで撮影すれば高画質で撮影できる。値下げされたこともあり、十分検討に値するカメラとなった。