シグマSD1レビュー&645D、M9、α900との比較(その4)
その3の続き
SD1評価
SD1を他のカメラと比較する前に、まずはSD1そのものを評価してみよう。
私がSD1を使ってテストを行ったのはわずか一週間だけなのだが、それはとても楽しい時間だった、と言わざるを得ない。それはSD1が素晴らしいカメラだから、というわけではない。実際のところ、SD1は「良く出来た」カメラだ。しっかりと作られたAPS-Cサイズの中型ボディは手によくなじみ、実用的な操作系を備えている。書き込み速度が遅いせいでイライラさせられる以外は良く出来ていると言って良いだろう。
SD1を最も楽しめるのは、データをパソコンに移して、写真をプリントアウトするときだ。使い勝手の悪いSPPで最低限の作業を手早く済ませTIFFに変換したあとは、自分の好みのソフトで心ゆくまで現像作業を楽しめる。それは本当に楽しい時間だ。
SD1や他のシグマ製のカメラが一般的なベイヤーのカメラとどう違っているのか、それを説明するには比喩や修飾語を使わなければならない。それは例えば、レストランでの食事や、ワインや、コンサートで聴いた演奏について語るのに等しい。あのステーキは60度に加熱してあったよ、ワインのPHは6.2だった、あの曲は最高で16000Khzまで出ていた、そんな言葉は自分の体験を語るのに何も意味を持たない。
さて、以下のメモは私がテスト撮影中にノートに書き留めておいたものだ。
私がここにあげているSD1のサンプル写真はほとんど田舎の風景なのだが、それは私がテスト期間に撮影できる場所がここしかなかったからだ。もちろんテスト撮影にはポートレートのサンプルも必要なのだが、あいにく美人のモデルを用意できなかったので、ローレンス・マトソンにお願いをしてモデルになってもらった。
見てわかるように、SD1のポートレートは、暖色に寄る傾向と相まってとても良い。問題は暗部だ。例えば前腕の部分や頭の上の方は4分の3ほどが赤いノイズが出ており、同じようなノイズは風景写真の中にもいくつか見つけられる。
シグマがSPPを改良するか、ソフト会社にデータを提供してRAW現像に対応するまでは、このノイズが現れたら一つずつ手作業で処理していかなくてはならない。
上の写真はピクセル等倍に切り抜いたものである。言うまでもないことだが、大きな用紙にプリントしても十分奇麗に見える。しかもこのサンプルのISOは800であり、SPPでデフォルトのノイズリダクションをかけただけである。素晴らしい画質だ。
高感度テスト
上の画像は高感度性能を比較するためのものだ。サンプルにはマクベスのカラーチェッカーと、ピントが合った部分、ボケている部分それぞれを含むようにした。露出は右側の白い正方形のハイライトが200になるように設定してある。ホワイトバランスは右から三段目のグレーを基準に行っている。シャープネスはSPPの-2.0で出力したあと、Lightroomで最適な量のシャープネスをかけている。下の画像はそれぞれの100%の切り出しである。
見てわかるように、ISO100から800まではとても素晴らしい。ISO1600でギリギリ許容範囲、ISO3200は使えない。高感度性能はそれほど悪くはないが、現行の最新センサーの性能には及ばない。解像度では優位なので、トータルの画質で考えるとSD1は低感度専用ではなく、高感度も使えるカメラだ。
シグマはSD1の画質に自信を持っているのか、極めて野心的な価格設定を行っており、その観点からも以下のカメラとの比較には意味があるだろう。私たちが選んだカメラはペンタックス645D、ライカM9、ソニーα900、そして同じソニーのα55だ。以下がその選択の理由である。
今回のテストではSD1は出力画素数の倍に相当する画素数分の解像度を持つと仮定した。つまり、SD1は3000万画素クラスの解像度があるとする。そして、ベイヤー方式では実際の画素数に対して3分の2程度の解像度を持つとしよう。これで645Dも同じ3000万画素相当になる。ようやくフォビオンセンサーの正当な比較と評価が出来るようになった。
実際にシグマは公式HPで以下のように主張している。
α55の1500万画素のセンサーはSD1の画像出力サイズとほぼ同じである。また、α55に使われているソニー製のセンサーはペンタックスのK-5やニコンのD7000といった他の多くのカメラにも使われているので、比較は有意義だろう。
以上の4つの機種はSD1と比較するのに最適な選択だろうか?上に書いた理由を見ても、私は適切だと思う。α900は低感度で使えば、他のフルサイズ機種、キヤノンの5DMk2、1DsMk3、ニコンのD3xなどと比べても、さほど画質は劣らない。α55は最新のAPS-Cサイズのセンサーを使用しており、他の1500万画素クラスの中級機と同等の画質だからだ。
以上の機材で私たちは比較撮影を行った。結果がどうなったのか見てみよう。
比較テスト
フォビオンがどのように独特で、他のカメラと違っているのか、それが良くわかる比較から始めよう。上の画像はSD1の高感度比較を撮影した時に、同時にα900で撮ったものと並べたもので、左側がSD1で右側がα900である。
この比較でα900を選んだ理由は、センサーが2400万画素で、普通の強さのローパスフィルターが使用されているからだ。両方共にISOは200である。SD1は24-70 F2.8 EX DGを使用し、αはツアイスの24-70mm F2.8を使用している。
二つの元画像にはもちろん違いがある。α900はSD1よりサイズが大きく、出力画素数の多いセンサーを使用しているので、同じカットを撮影しても画像サイズは異なるのだ。さらに、センサーサイズの違いから被写界深度も異なっており、また色の表現もそれぞれ異なる。
私が見たところ、SD1はα900と比べてよりコントラストがはっきりしており、いくつかの色はより彩度が高く、逆に明らかに彩度が低い色もある。要するに、違う色空間を持っているということだ。α900はハイライトからの諧調がより滑らかだが、全体の解像度ではローパスフィルターの影響が出てくる。
SD1は明らかにα900より細かく解像している。この違いは大きなサイズでプリントをした時により明白になる。端的に言えば、SD1の画像にはより多くのディテールが含まれているようだ。
ローパスフィルターの影響がわかったところで、同じくローパスフィルターのないライカM9とも比較してみた。しかし、M9との比較では、SD1の利点はベイヤーパターンを使用していないことによる色モアレの発生が起こらないことだけになってしまった。
このことはSD1を現在の価格を、現実的に、あるいは比喩的に、正当化しうるだろうか?その結論はもう、それぞれの人に任せるしかない。
色空間
全ての画像は可能なかぎり同じ条件で撮影されている。露出は白色のパレットが同じ明るさになるようにし、ホワイトバランスは3番目のパレットを基準にそれぞれSPPとLightroomで設定した。
SD1の色空間を見てみると、明らかに他の四つのカメラとは異なった色だとわかる。この色はシグマがあえてそういう設定にしたのか、それとも単にSPPのバグなのかは不明だ。しかし、今回使用したSD1は開発中のベータ機ではなく、実際に売られているモデルである。それなので、これはシグマの意図だと今回は判断することにした。
SD1は他のカメラと比較しても明らかに暖色に偏りすぎている。SD1以外の4つのカメラは比較的同じ色だ。この暖色寄りの傾向のおかげで、このページにあげているサンプル画像のいくつかは、とても好意的に受け入れられたようだ。このやわらかい色調を見たとき、私は70年代にアグファクロームで撮った写真を思い出して懐かしく思った。
けれども、もちろんカメラとしては、このSD1の色は正確ではない。
SD1評価
SD1を他のカメラと比較する前に、まずはSD1そのものを評価してみよう。私がSD1を使ってテストを行ったのはわずか一週間だけなのだが、それはとても楽しい時間だった、と言わざるを得ない。それはSD1が素晴らしいカメラだから、というわけではない。実際のところ、SD1は「良く出来た」カメラだ。しっかりと作られたAPS-Cサイズの中型ボディは手によくなじみ、実用的な操作系を備えている。書き込み速度が遅いせいでイライラさせられる以外は良く出来ていると言って良いだろう。
SD1を最も楽しめるのは、データをパソコンに移して、写真をプリントアウトするときだ。使い勝手の悪いSPPで最低限の作業を手早く済ませTIFFに変換したあとは、自分の好みのソフトで心ゆくまで現像作業を楽しめる。それは本当に楽しい時間だ。
SD1や他のシグマ製のカメラが一般的なベイヤーのカメラとどう違っているのか、それを説明するには比喩や修飾語を使わなければならない。それは例えば、レストランでの食事や、ワインや、コンサートで聴いた演奏について語るのに等しい。あのステーキは60度に加熱してあったよ、ワインのPHは6.2だった、あの曲は最高で16000Khzまで出ていた、そんな言葉は自分の体験を語るのに何も意味を持たない。
さて、以下のメモは私がテスト撮影中にノートに書き留めておいたものだ。
素晴らしい解像力。SD1の解像度がα900やα55を超えていることは、ディスプレイ上でも普通サイズのプリントでも、明らかに目で見てわかる。
ライカM9には及ばないようだが、これはレンズや他の要素が大きいのかもしれない。
ペンタックス645Dは別次元の存在だ。SD1は現行の最も安価な中判デジタルにすら対抗できない。
SD1で最も素晴らしいのは精細なディテールだろう。ローパスフィルターがないことが大きなメリットになっているようだ。
このディテールの細かさが、フォビオンのユーザーが良く言う「立体感」を作っているのだろう。細部のさらに細かな部分まで見事に解像している。
SD1の画像ファイルは引き延ばしが可能だ。プリント用に2倍に拡大したとしても画質の劣化は感じられない。
オートISOは酷い。使わない方が良い。
SPP5はゴミだ。どうしても必要なとき以外は使わない方が良い。ホワイトバランス、グレーポイント指定、それだけのために必要。
SD1の色はコダクロームに似ているという人がいるが、そんなことはない。私には70年代のアグファクロームに見える。
暖色に偏りすぎていて不自然だ。
色調の変化はとても滑らかで、とても12bitのパイプラインで処理しているとは思えない。14bit機と同等の滑らかさだ。これが「フォビオンらしさ」だろうか?
ポートレート
Sigma SD1 with 70-200mm @ ISO 800
私がここにあげているSD1のサンプル写真はほとんど田舎の風景なのだが、それは私がテスト期間に撮影できる場所がここしかなかったからだ。もちろんテスト撮影にはポートレートのサンプルも必要なのだが、あいにく美人のモデルを用意できなかったので、ローレンス・マトソンにお願いをしてモデルになってもらった。
見てわかるように、SD1のポートレートは、暖色に寄る傾向と相まってとても良い。問題は暗部だ。例えば前腕の部分や頭の上の方は4分の3ほどが赤いノイズが出ており、同じようなノイズは風景写真の中にもいくつか見つけられる。
シグマがSPPを改良するか、ソフト会社にデータを提供してRAW現像に対応するまでは、このノイズが現れたら一つずつ手作業で処理していかなくてはならない。
上の写真はピクセル等倍に切り抜いたものである。言うまでもないことだが、大きな用紙にプリントしても十分奇麗に見える。しかもこのサンプルのISOは800であり、SPPでデフォルトのノイズリダクションをかけただけである。素晴らしい画質だ。
高感度テスト
上の画像は高感度性能を比較するためのものだ。サンプルにはマクベスのカラーチェッカーと、ピントが合った部分、ボケている部分それぞれを含むようにした。露出は右側の白い正方形のハイライトが200になるように設定してある。ホワイトバランスは右から三段目のグレーを基準に行っている。シャープネスはSPPの-2.0で出力したあと、Lightroomで最適な量のシャープネスをかけている。下の画像はそれぞれの100%の切り出しである。
ISO100
ISO200
ISO400
ISO800
ISO1600
ISO3200
見てわかるように、ISO100から800まではとても素晴らしい。ISO1600でギリギリ許容範囲、ISO3200は使えない。高感度性能はそれほど悪くはないが、現行の最新センサーの性能には及ばない。解像度では優位なので、トータルの画質で考えるとSD1は低感度専用ではなく、高感度も使えるカメラだ。
他のカメラとの比較
私たちはSD1と比較するために4つの性格の異なるカメラを用意した。これらのカメラとの比較ではボディ性能や操作系については考慮しない。純粋に画質のみでの比較である。シグマはSD1の画質に自信を持っているのか、極めて野心的な価格設定を行っており、その観点からも以下のカメラとの比較には意味があるだろう。私たちが選んだカメラはペンタックス645D、ライカM9、ソニーα900、そして同じソニーのα55だ。以下がその選択の理由である。
645D
APS-Cサイズのセンサーを持つカメラを中判デジタルと比較するのは奇妙なことなのかもしれないが、SD1なら比較する意味はあるのかもしれない。シグマはSD1の画素数を4600万画素と主張しているが、ベイヤー方式を基本にして考えると、4600万画素というのは大げさだ。逆にシグマの主張では、ベイヤー方式は色の補完を行っているので、実際の解像は見かけ上の画素数ほどには良くないことになる。今回のテストではSD1は出力画素数の倍に相当する画素数分の解像度を持つと仮定した。つまり、SD1は3000万画素クラスの解像度があるとする。そして、ベイヤー方式では実際の画素数に対して3分の2程度の解像度を持つとしよう。これで645Dも同じ3000万画素相当になる。ようやくフォビオンセンサーの正当な比較と評価が出来るようになった。
実際にシグマは公式HPで以下のように主張している。
この新しいセンサーの性能を、一般的なデジタルカメラの解像度テストで使用されている白黒(モノクローム)の解像チャートで測定すると、実に、カラーフィルターアレイセンサーでは3,000万画素相当の輝度解像度を誇ります。
ライカM9
SD1のメリットの一つに、モアレ防止のためにローパスフィルターを使用していないということがある。M9も同様にローパスフィルターのない1800万画素のセンサーを使用しているので比較するに値する。ちょうどボディも似たような値段だ。ソニーα900
α900は2400万画素のフルサイズセンサーを使用している。これはライカM9よりも多い画素数だが、α900はローパスフィルターを使用しているので、その効果がどれほどであるか、比較する価値がある。他のカメラと同様に、機能そのものは評価しない。α900は3000ドル以下で購入でき、これはSD1の半額以下だ。ソニーα55
私は今回の比較テストに普通の値段で買えるAPS-Cサイズのカメラを入れたかった。キヤノン、ニコン、ペンタックス、その他のメーカーもAPS-Cのカメラを出しているが、たまたま私はα55とソニーやツアイスの高性能レンズを持っているので、今回のテストで使用することにした。α55の1500万画素のセンサーはSD1の画像出力サイズとほぼ同じである。また、α55に使われているソニー製のセンサーはペンタックスのK-5やニコンのD7000といった他の多くのカメラにも使われているので、比較は有意義だろう。
以上の4つの機種はSD1と比較するのに最適な選択だろうか?上に書いた理由を見ても、私は適切だと思う。α900は低感度で使えば、他のフルサイズ機種、キヤノンの5DMk2、1DsMk3、ニコンのD3xなどと比べても、さほど画質は劣らない。α55は最新のAPS-Cサイズのセンサーを使用しており、他の1500万画素クラスの中級機と同等の画質だからだ。
以上の機材で私たちは比較撮影を行った。結果がどうなったのか見てみよう。
比較テスト
SD1 ISO200 α900 ISO200
フォビオンがどのように独特で、他のカメラと違っているのか、それが良くわかる比較から始めよう。上の画像はSD1の高感度比較を撮影した時に、同時にα900で撮ったものと並べたもので、左側がSD1で右側がα900である。
この比較でα900を選んだ理由は、センサーが2400万画素で、普通の強さのローパスフィルターが使用されているからだ。両方共にISOは200である。SD1は24-70 F2.8 EX DGを使用し、αはツアイスの24-70mm F2.8を使用している。
二つの元画像にはもちろん違いがある。α900はSD1よりサイズが大きく、出力画素数の多いセンサーを使用しているので、同じカットを撮影しても画像サイズは異なるのだ。さらに、センサーサイズの違いから被写界深度も異なっており、また色の表現もそれぞれ異なる。
私が見たところ、SD1はα900と比べてよりコントラストがはっきりしており、いくつかの色はより彩度が高く、逆に明らかに彩度が低い色もある。要するに、違う色空間を持っているということだ。α900はハイライトからの諧調がより滑らかだが、全体の解像度ではローパスフィルターの影響が出てくる。
SD1は明らかにα900より細かく解像している。この違いは大きなサイズでプリントをした時により明白になる。端的に言えば、SD1の画像にはより多くのディテールが含まれているようだ。
ローパスフィルターの影響がわかったところで、同じくローパスフィルターのないライカM9とも比較してみた。しかし、M9との比較では、SD1の利点はベイヤーパターンを使用していないことによる色モアレの発生が起こらないことだけになってしまった。
このことはSD1を現在の価格を、現実的に、あるいは比喩的に、正当化しうるだろうか?その結論はもう、それぞれの人に任せるしかない。
色空間
全ての画像は可能なかぎり同じ条件で撮影されている。露出は白色のパレットが同じ明るさになるようにし、ホワイトバランスは3番目のパレットを基準にそれぞれSPPとLightroomで設定した。
SD1は他のカメラと比較しても明らかに暖色に偏りすぎている。SD1以外の4つのカメラは比較的同じ色だ。この暖色寄りの傾向のおかげで、このページにあげているサンプル画像のいくつかは、とても好意的に受け入れられたようだ。このやわらかい色調を見たとき、私は70年代にアグファクロームで撮った写真を思い出して懐かしく思った。
けれども、もちろんカメラとしては、このSD1の色は正確ではない。