シグマSD1レビュー&645D、M9、α900との比較(その2)

その1の続き

ボディ

画質や値段について語る前に、SD1を純粋に写真を撮る機械として見てみよう。SD1は中級機のボディにAPS-Cサイズのセンサーを搭載した一眼レフである。視野率98%のファインダーは良く出来ているが、ソニーα900キヤノン5DMk2、ニコンD3などと比べると、やはりファインダー像は小さく、暗く、離れて見える。

グリップは大きく深く作られており、120-300mm F2.8のような大型レンズを使用した時でさえ、とても握りやすいと感じた。操作機能は他のカメラとはいささか異なっており、特に良くもないが他より悪いということもない。ただ単にシグマ独自の操作系が採用されているというだけだ。

SD1用のバッテリーグリップが既に発表されているが、今年の後半に発売予定である。新型フラッシュも日本以外ではまだ発売されていない。SD1にはポップアップフラッシュが内蔵されており、スナップ用としては良く出来ている。

最近のカメラには上部に液晶パネルがないことが多いが、SD1にも同様に上面パネルはない。代わりに背面パネルでセッティングを行う。背面液晶の品質は悪くはないが、最新の100万画素クラスの液晶を搭載したカメラと比較すると、46万画素というのはいささか安っぽい。

測光モード、ISO感度、AFポイントにはそれぞれダイレクトボタンがあり、FUNCボタンを押すことで主要なセッティングを十字キーで容易に変更できる画面に移れる。この機能はソニーα900と似ており、私自身とても慣れているので使いやすいと感じた。

また、QSボタンからも主要なセッティングを変更できる画面に移ることができる。つまり、SD1では主要なパラメーターの変更は3通りの方法があるということだ。それぞれのユーザーが自分の好みにあった操作方法を選ぶことができるのは良い事だ。

QSボタンを搭載したのはSD1が初めてではないが、私自身はこの機能はあまり好きではない。十字キーのそれぞれが特定の設定に対応している(例えば、上ボタンではISOの変更ができる)のだが、実際の設定の変更は同じボタンを何度も押し続けることで順番に変わっていき、最後の数値に来たらまた最初に戻る、という仕様なのだ。もし望んだ数値を通り過ごしてしまったら、もう一度最初からボタンを押し続けなくてはならない。端的に言って、これは酷い操作方法だ。なので、私は結局、この機能は使わないことにした。

上面の左側のダイヤルはOFFの時に電源を切ることができる。またこのダイヤルでドライブモードの変更ができ、1コマ撮影、連続撮影、2秒タイマー、10秒タイマー、ミラーアップモード、そしてオートブラケットの変更ができる。(キヤノンはこの手軽にミラーアップが出来る機能を参考にすべき!)

上面右側のダイヤルではよくあるP・A・S・Mの各モードを選ぶことができ、さらに自分がよく使う設定を記憶させたカスタムセッティングを3種類利用することができる。アマチュアっぽいシーンモードは搭載されてないが、このカメラを使うような上級者には必要ないだろう。シャッターボタンの後ろには垂直のコントロールホイールがついており、背面の親指近くには二つ目の水平なコントロールホイールがある。

これらのダイヤルにロック機能はないが、ほどよい硬さなので設定が勝手に変わる心配はない。バッグから取り出すときに変な持ち方をして設定が変わってしまったことが何回かあっただけだ。

まとめると、SD1の操作系は特に画期的というものではないけれど、とても実用的で、使用する写真家のことをよく考えて作られている。最近の他のメーカーのカメラはどうもエンジニアによってデザインされているようで、次から次に付け加えられる新機能をただ見せたいがために、ひどく使いづらくなっている部分がある。SD1はそんなことはない。そのシンプルな操作系は賞賛に価する。

SD1はCFカードを使用しており、他のカメラと同様右側からカードを挿入する。バッテリー容量はよくある1500mAhで、もちろん他のカメラ用の中国製バッテリーなどは使えない。バッテリーの持ちは良い方で、一つで丸一日分、7月の暖かな気温で数百枚の撮影ができた。予備バッテリーがもう一つあればほとんどの状況に対応できるだろう。

前述したとおり、SD1には動画撮影機能もライブビューもテザリング機能もない。



Sigma SD1 with 70-200mm f/2.8 @ ISO 400


撮影機能

初めて使うカメラはどれもそうだが、SD1も慣れるのに少し時間が必要だ。SD1そのものはとてもシンプルなカメラで、マニュアルにも特に難しいところはないし、カメラに慣れている人ならマニュアルを読む必要すらない。撮影を始めて三日目にようやく、なにか重要な機能を見落としていないか、もう一度マニュアルをじっくり読んだ程度だ。撮影の最初の数日間はローレンス・マトソンも一緒だったので、早くSD1に慣れるのにとても助かったことは付け加えておかなくてはならない。ありがとう、ローレンス。

私が唯一使い勝手が悪いと感じた機能はオートブラケットである。まずブラケットするコマ数を設定し、次にブラケットの順番をアンダーからかオーバーからか決めなくてはならない。問題なのはオートブラケットを有効にするときだ。オートブラケットを動作させるにはブラケット量を決めなくてはいけないのだが、この手順が面倒なのだ。以下の順番で操作をしなければならない。

左側のダイヤルをABに合わせる

背面液晶を見ながら後ろのホイールでブラケット量(最大+/-1.7EV)を決める

左側のダイヤルを好みのドライブモードに合わせる。通常は連写モードだろう

右側のダイヤルを好みの撮影モードに合わせる。通常はAモードだろう

撮影をする

オートブラケットを終了させるために左側のダイヤルをもう一度ABに合わせる

ホイールを回してブラケット量を0に戻す。もし0に戻さなければオートブラケットのままで撮影が続く

これは面倒な作業だし時間もかかる。さらに問題なのは、SD1のデータ書き込み速度がとても遅いということだ。データの書き込み中は背面液晶が反応しないので、撮影画像を確認したり、設定を変更したりするのに手間がかかってとてもイライラする。

オートブラケットで5コマ撮ると、それだけで1分近くの書き込み時間が必要になる(16GBサンディスクエクストリームIV UDMA対応45MB/s使用時)。これを他のカメラと比較すると、例えば2400万画素のソニーα900は7コマの画像を7秒で同じカードに書き込める。

SD1がデータをカードに書き込んでいる60秒の間に、背面液晶でFUNCメニューやQSメニューを見ることはほとんど不可能だ。時々何かのはずみで画面が現れることがあるけれど、たいていの場合は何も反応しない。ソニーα900や他のカメラの大半はデータ書き込み中でもメニュー画面の操作は可能だ。

この、書き込み中に画面操作が出来ないというのは、SD1の書き込み速度の遅さを考えると大きな問題だ。過去5年間に作られた他の全てのカメラは書き込み中にボディの操作は出来る。SD1だけが出来ない。

シグマからの説明によると、これはカードへの書き込み速度が遅いのが原因ではなく、X3センサーの画像処理に大変負荷がかかることが原因だそうだ。確かにそれは大変だろう。けれども、だからといって、結果的にSD1が他のカメラと比較して遥かに動作の鈍いカメラになっている、という事実は何も変わらない。

マチュアカメラマンが時間をかけて忍耐強く、例えば風景写真などを撮る場合は、これはあまり問題にはならないだろう。けれども、結婚式や、ファッションショーや、報道写真などを撮るプロにとって、カードへの書き込み中にメニュー画面が見られないというのは、必要な写真が撮れるか撮れないかという致命的な違いになりうる。

もう一つ嫌なのはバッテリー表示がいい加減なことである。まだ2コマ分のバッテリーが残っているのに、そこから20枚写真を撮ったらバッテリーがなくなった、ということすらありうる。SD1のバッテリーの持ちはとても良いけれど、もう一つ予備を持っておくといいだろう。

以上の点以外ではSD1の操作についてそれほど大きな不満はない。既に述べたように、コントロールボタンで主要なメニューが操作できるのを私は気に入っている。

一つ欲しい機能をあげるとするなら、ファインダーに顔認識センサーを付けて欲しいということだ。SD1は上面に設定を表示するサブ液晶がないので、全ての設定を背面液晶で操作しなければならない。それなので、ファインダーを構えようとした時に、背面液晶が明るいままだと眩しいのだ。例えばソニーα900はカメラを構えると自動的に液晶が消える。これはとても素晴らしい機能なので、SD1を使っている時に、この機能があればいいのにと思っていた。



Sigma SD1 with 120-300mm f/2.8 @ ISO 200


使用レンズ

良いセンサーには良いレンズが必要だ。SD1を買うような人は安くて写りの悪いレンズを使ったりはしないだろう。私は個人的にシグマのレンズを使った経験があまりないので、どのレンズが良いのかはわからない。しかし、今回のテストで使用したレンズはどれも十分な性能だったし、とりわけ以下のレンズは素晴らしかった。

8-16mm F4.5-5.6 DC
24-70mm F2.8 EX DG(このレンズだけはSD1で使うと色収差が気になった)
70mm F2.8 EX DG Macro
70-200mm F2.8 EX DG
120-300mm F2.8 EX DG(これが最高のレンズだった)

8-16mmと120-300mmの写りには驚かされた。とりわけ120-300は最高レベルのレンズだ。信じられない性能である。もしソニーαマウントで発売されたら今日にでも購入したい(シグマさんお願い!)。



Sigma SD1 with 24-70mm f/2.8 @ ISO 400



赤外線/ダストフィルター

他のカメラと違って、シグマの一眼レフとSD1はレンズマウントとセンサーの間に取り外し可能な赤外線フィルターが装着されている。これは単に、他のカメラのように赤外線をカットするためだけに付いているのではなく、ゴミがカメラ内に入るのを防ぐ役割をしている。フィルターはセンサーから離れているので掃除するのも容易だし、取り外しもしやすい。

このフィルターを外したまま、レンズに赤外線のみを通過するフィルターを付けると、赤外線写真を撮ることが出来る。世の中には何百ドルもかけて、キヤノンニコンや他のメーカーのカメラを赤外線カメラに改造している人がいるけれども、SD1ならフィルターを外すだけだ。作業は数秒で終わるし簡単に元に戻せる。




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