可能性のカメラ : SIGMA SD1 感想&作例

SD1 10-20mm F4-5.6 EX DC @20mm F8 ISO100


ツイッターで日頃から懇意にさせて頂いているjujubierさんから、SD1を試写させてもらえるという申し出があり、名古屋駅~四間道~丸の内付近を散歩しながらSD1で写真を撮ってきました。その作例を紹介しつつ、レビューを書いてみようと思います。

こちらから持っていった機材はSD14、50mmF1.4、30mmF1.4、70mm macro、10-20mm F4-5.6、300mm APO Tele macroで、あれこれカメラやレンズを交換しながら、ふらふらと3時間ほど町中をスナップしてきました。

あいにく天気は一面の曇り空で、ISO100だと開放からせいぜい一段絞れるかどうかという状況。フォビオンではできるだけ低感度で写真を撮りたいので、開放付近で撮った写真が多くなりました。



30mm F1.4 EX DC @F1.4 ISO 100



SD1を手に持ってすぐに感じるのはそのなじみの良さ。700gと決して軽いカメラではありませんが、人差し指のグリップが深く、長時間持ち歩いても疲れを感じません。

SD14/15とは異なり、ダイヤルが二つに増えた事で、絞りやシャッター速度の変更もずいぶん楽になりました。AFポイントの変更を良く行うので、右手親指近くのボタンを押しながらのポイント変更もスムーズに感じました。

ただ、ダイヤル二つのそれぞれがカスタマイズできれば、もっとスムーズに操作が出来るのでは?とも感じました。個人的に後ろ側のダイヤルをボタンを押さずにAFポイントが変更できればずいぶん楽だっただろうと思います。



Macro 70mm F2.8 EX DG @F2.8 ISO 200



操作面でのもう一つの不満は、データ書き込み中に背面液晶が確認できないことです。SD14/15には上面に小型の液晶パネルがあり、データ書き込み中でも絞りやシャッター速度の変更が自由に出来ました。

けれどもSD1はデータ書き込み中には背面液晶を自由に確認できず、それゆえ絞りの変更などはファインダーをのぞきながらするしかありません。これはやはり少々不便なように感じました。もしファームアップなどで変更できるようなら、書き込み中でも液晶画面は自由に情報を表示できるようにして欲しいと思います。



Macro 70mm F2.8 EX DG @F2.8 ISO 200



SD1で特に洗練されていると感じたのがシャッターフィールです。ミラーの動作がSD14と比べてとても洗練されており、シャッターを切った瞬間に振動を感じる事はほとんどありません。SD14が「カシャン」とシャッターが切れるとしたら、SD1は「パタン」と静かに切れる感じです。

このシャッターのおかげで手ブレが画像に影響することはかなり軽減されたと思うのですが、それでもなお、シャッターのブレは画面に影響を与えてるように感じます。ミラーアップして撮った画像と比較すると、やはりわずかに画面全体が甘くなっている印象を受けました。



300mm F4 APO Telemacro @F4 ISO400



SD1の高感度性能はとても上がっています。ISO400でも十分な彩度と解像感を保っているように感じました。これがSD14だったら縮小画像でも粒状感を感じるくらいノイズが多くなるところです。画素ピッチを縮小しながら高感度性能を上げるという矛盾を克服したシグマとフォビオンの技術者には惜しみない賞賛を送りたいと思います。

また、心配していたAF性能も、目立って外れるといったことはありませんでした。町中を散歩して気に入ったものを撮るというような使い方ではAFが外れる心配は全くないと思います。

上の蝶の写真のように、小さくて動き回るものを望遠マクロで撮る、というような時には、もちろんマニュアルフォーカスが必要になります。マニュアルフォーカスでも、98%のファインダーは見やすくピントの山が掴みやすいので、動いている昆虫のようなものでも苦痛を感じることはありませんでした。

総じて、ボディの性能は必要十分なものだと思います。



300mm F4 APO Telemacro @F4 ISO400



目下のところ、一番の不満は現像ソフトSIGMA Photo Pro 5(SPP5)です。

何よりも動作が不安定というのが困ります。今回撮影した画像、二百数十枚を現像中に3回ハングしました。デスクトップPCの環境はWin 7 Corei7 6GBメモリなので、特に処理速度が足りないということもないと思います。

データが重くて処理速度が遅いというのは納得できますし、今後もっとCPUの性能が上がれば現像も快適になっていくでしょう。それなので、まずはソフトの安定性を高める事を最優先に、バージョンアップをして欲しいと思います。


(注: その後のバージョンアップでSPPはかなり動作が安定し、作業中にハングすることはほとんどなくなりました)


また、現像中に感じたのは、SD14よりもダイナミックレンジは狭いかもしれない、ということです。SD14は歴代フォビオン機の中でも抜群のダイナミックレンジを誇りますから、それと比較するのは酷かもしれませんが、ハイライト、シャドー共に、現像での粘りが弱いと感じました。

もちろん、厳密な比較をやっていないのでただの思い込みかもしれませんが、もしSPPやファームでの改良が可能なら改善して欲しいと思います。



300mm F4 APO Telemacro @F4 ISO400



SD1とはどんなカメラか。

可能性のカメラだと思います。


最高の画質を写し出すには、最高のレンズと、細心の注意を払った撮影が必要です。その手間を惜しまなければ、APS-Cサイズのボディで中判デジタルに匹敵する写真が撮れる、世界で唯一のカメラだと思います。


では、SD1は難しいカメラか。

そんな事はありません。SD1は難しくも何ともありません。何も考えずにシャッターを切っても、通常の鑑賞の仕方なら、誰もがうなる高画質の写真が撮れると思います。今回僕も何も考えずファインダーをのぞいて、いつものように適当にピントを合わせてシャッターを切っただけでした。それでも、上にあげたような写真が撮れたのは、ひとえにSD1のカメラとしての基本性能の高さと、フォビオンセンサーのポテンシャルの高さゆえだと思います。

SD1は楽しいカメラです。楽しいからシャッターがたくさん切れる。たくさん写真が撮れるから、その中に本当にすごい写真が紛れる可能性が上がる、そんなカメラだと思います。

フィルムで写真を撮ったときのように、本当に撮れてるかな、失敗してないかな、不安になりながら、家に帰ってパソコンでファイルを現像してみる。パラメーターを少しいじってみると、そこには今まで見た事もなかったような写真が現れてくる。

この感動は、フォビオンを使った事がある人なら誰もが味わった事があるでしょう。SD1にも、もちろん、その感動があります。他のカメラでは決して味わう事の出来ない感動がそこにはあります。

このカメラで何が撮れるのか、どんな映像を生み出してくれるのか、それが誰にも見えない。

SD1は可能性のカメラです。これから先、どんな写真が生まれてくるのか、それを見てみたい。そんな事を感じました。




自由作例

30mm F1.4 EX DC @F2.8 ISO100

300mm APO Tele macro @F7.1 ISO400