シグマSD1レビュー (British Joournal of Photography)

元記事 Hands-on with Sigma's SD1

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http://www.bjp-online.com/IMG/218/183218/sd1.jpg?1309730230

シグマSD1はフォトキナ2010で発表され、現在全世界で発売中である。シグマは2002年発売のSD9以来、フォビオンX3テクノロジーを採用し続けており、同じフォビオンを搭載したSD1もまた、ユニークなカメラであると言える。

SD1は1500万ピクセルサイズの画像を出力でき、堅牢なプロ仕様のボディをまとい、APS-Cサイズのセンサーを搭載している。このことによって、SD1は他のデジタル一眼レフカメラと真っ向勝負できるようになった。

3月に起きた悲劇的な地震によって、日本の多くの企業や個人が影響を受け、その結果として、商品の発送が遅れたり、昨年末に発表された新製品の多くが発売延期となった。シグマもまた地震による被害を受けたにもかかわらず、当初予定されていた時期からはさほど遅れずにSD1は発売された。これは過去の、フォビオンと協力して開発されたカメラの多くが発売延期となったことと照らし合わせてみても、特筆に値する。

発売時期だけではなく、発売予想価格も注目を集めた。フォトキナ開催中にシグマCOOの山木和人氏は「SD1の推定価格は、キヤノンの5D MkIIあたりと同価格帯になる」と発言したと言われており、多くの人はSD1を20万円台半ばになると予測した。

しかし、定価がそれまでの予想の3倍以上になることが発表されると、「中級機と同程度」という宣伝は逆効果となり、多くの写真愛好家を失望させた。山木氏はツイッターで、SD1の価格を暗に正当化するような、前例のない発言をしており、そのことがさらにSD1の堂々たる発表に汚点を残す事となった。

もしシグマがSD1に本当の自信を持っているのなら、発売価格を正当化する必要は全くないはずである。イギリスでは、SD1の定価は付加価値税込みで6199ポンド(約80万円)である。実売価格は定価よりはいくぶんか下がるものの、それでもなお、SD1という4500万画素の怪物を買おうとすると、5D Mk2やD3sではなく、ライカのM9-Pや、ニコンのD3xと同価格帯であることに気づく。

SD9が過去に発売されたときと同様に、SD1もまた論争を引き起こしているカメラである。しかし、他の一眼レフと直接比較されて論じられることはあまりないようだ。というのも、APS-Cサイズセンサーのカメラの中で、SD1と同価格帯のものはひとつもないからである。

現在SD1をスタジオと屋外で使用中であり、このユニークなセンサーを搭載したカメラが本当に実売60万円というプレミア価格に値するのか、確認中である。今の時点での印象は、フォビオン特有の画質はSD1にも受け継がれており、解像度が上がったにもかかわらず、高感度性能は向上しているようである。

SD1はその用途からもスペックからも、ジャーナリズムやスポーツ写真の世界で、ニコンD3シリーズやキヤノン1Dシリーズに取って代わることはないということは明らかだ。けれども、ファインアートの世界や、ファッション写真の分野でSD1が活躍する可能性はある。

とりわけファッションの世界では、布地の質感や微細なパターンが保持されることが何よりも重要なので、写真家はベイヤー式カメラのローパスフィルターによって画質がぼやけることを嫌う。ベイヤーパターンである以上、ローパスフィルターのないカメラを使っても偽色やモアレを回避する事は難しいし、マルチショット機では撮影に時間がかかりすぎてしまう。

HIモードで5コマ秒、連続7コマしか撮影できないSD1は、マシンガンのように連写するカメラではない。また、フォビオンセンサーはビデオ用としても優れているが、SD1にはライブビューはないし、DPシリーズに搭載していたQVGAサイズの動画機能すらない。おそらくAPS-Cサイズの小型のボディには、画像処理用のチップを積むだけで精一杯で、ライブビューなどの機能を搭載するには熱処理やスペースの関係で難しいのだろう。

SD1のボディは過去のシグマの一眼レフモデルと比較しても、飛躍的な進歩を遂げている。防塵防滴効果のあるマグネシウム合金ボディに、深くてしっかりとした造りの、比較的スリムで快適なグリップを備えている。これは私がこれまで握ったグリップの中でも一番手になじむものだ。SD1の小型のボディは個人的にミノルタのα7000を思い出させる。

SD1には、これまでのシグマの一眼レフについていたサブ液晶パネルの代わりに、二つ目のコントロールダイヤルが搭載されている。また、ISOや露出を変更するためのダイレクトボタンがボディ上部に配置されている。シグマのカメラに特徴的なQSボタンはSD1にも残っている。

画質とは直接関係はないが、他の一眼レフに採用されているような、VGAが表示できる3型の液晶パネルをSD1が採用しなかったのは残念な事だ。また、AF微調整機能が搭載されたことや、SD15のSDカードからそれ以前のCFカードに戻ったことも、SD1の特徴である。

端的に言えば、SD1のボディ性能は10万円台で売られている中級一眼レフと同等である。SD1の60万円超という値段は、他のカメラでは得られない、その画像にかかっていると言って良い。ボディデザインを除いて、全てのエネルギーは内蔵されているX3センサーと画像処理エンジンに注がれている。

このような一極集中はリスクを伴う。SD1は、他の機種のように様々な機能を搭載せず、唯一無二の新型センサーだけに集中している。しかし、テクノロジーだけがカメラではない。シグマが超えなければならないハードルは他にもたくさんある。

例えば、ライカM9は、マニュアル操作が必要で、高感度が苦手である。しかし、品質、価格、そして機能のバランスが良く、ファンを納得させるだけの高品質の写真を撮る事が出来るので、高い評価を受けている。

ブランドとしてのシグマは「低価格なレンズを供給するメーカー」として広く認知されているし、過去のDPやSDシリーズは良いカメラであったにもかかわらず、実売価格は下がり続けている。それゆえ、写真家の中にはシグマの一眼レフが他のどのAPS-Cカメラよりも高いということを受け入れがたく思う人もいるだろう。



作例




フォビオンセンサーの最大の特徴は色の補完をしない事である。これはレンズが解像したものを全てセンサーが捉える、ということだけではなく、離れている二つの被写体の間に画素補完による偽の情報が入り込まないということも意味する。

熊の人形の布地の質感が十分表現されており、繊維の一本一本がはっきりと識別できる。ベイヤーカメラではここまではっきりと質感を表現できない。車のおもちゃ箱の印刷とボール紙の繊維も奇麗に写っている。スタジオで撮影したときの色の再現性は素晴らしい。







SD1には「FOVEON」ロゴはない。機能的で取り外しの容易なIRフィルターは引き続きSD1でも使用されている。このフィルターを取り外す事で、SD1は簡単に高解像な赤外線カメラへと改造する事が出来る。





SD14SD15にあったQSボタンはSD1にも受け継がれている。QSボタンによって、よく使う設定を素早く変更する事が出来る。ダイレクトボタンがたくさんあるが、最近の多機能なカメラと比較しても、背面が散らかっているという印象は受けない。ISO6400は過去のシグマのカメラの中でも最高の感度だ。

http://www.bjp-online.com/IMG/222/183222/sd1-1-2.jpg?1309731068



レビューの続きは8月3日発行のBritish Journal of Photography誌に掲載予定です。