速報レビュー シグマSD1 dpreview


 SD1は2010年のフォトキナで大変な話題となったカメラだ。シグマは470万画素x3のフォビオンセンサーを自社のSDやDPシリーズに使い続けており、2008年にフォビオン社を買収した。そして、フォビオン社に更なる高品質の写真のためのセンサーを開発するよう要請し、SD1に搭載される1500万画素x3の新型センサーが開発された。当初予定されていた発売日からかなり遅れはしたものの、ようやくこのたび発売となった。

まず言及されるべきはその値段である。包み隠さず言うと、涙が出るほど高価だ。シグマUSAのHPでは「ボディよりも安価な」レンズキットを発売しているが、それでも非常に高価なキットであることに変わりはない。シグマはSD1を中判デジタルの安価な代替品であると宣伝しているが、これは全くの的外れである。というのも、現在では3000万画素のベイヤーセンサーと同等の画質を生み出す「可能性がある」だけだからだ。端的に言って、ごく限られた台数しか売れないであろうその売り上げで、新型センサーの研究開発費を回収するために、このような値段がつけられているようだ。SD1はおそらくデジタル中判と同程度の数しか売れないとシグマは予測しているのではないだろうか。

もし値段を半額にすれば倍の台数が売れる、そう思う人は多いだろう。けれどもシグマはその方法を選ばなかった。見方を変えると、シグマはニコンD3xを超える値段設定をして限られた数を売る方が、D300と同等の価格でより多くの人にSD1を売る方よりも、メリットがあると考えたようである。シグマがそう決定した以上、これ以上この価格設定について議論する意味はない。ここではカメラそのものの機能について集中したい。



SD1の最大の特徴は言うまでもなく、新型1500万画素x3のセンサーである。フォビオンセンサーの構造についてあまり詳しくない人のために説明すると、これは既存のカメラのセンサーとは根本的に異なった方法で色を決定しているセンサーである。ほとんど全てのカメラのセンサーはモノクロセンサーの上にパターン配置されたカラーフィルターを乗せている。それぞれのピクセルは赤、緑、青のどれか一つの色しか感知できない。周辺のピクセルから得られたデータを演算し、記録されない残りの二色を推測することで、最終的にフルカラーの画像を作る。

フォビオンはカラーフィルターを使用しない。その代わりに、異なる色は異なる波長を持つという、光の特性を利用する。この特性のおかげで、光はシリコンに当たるとそれぞれの色ごとに異なった階層に浸透する。フォビオンチップは一つのピクセル上にある三層に分かれた階層のそれぞれで、光子の量を測定し、それぞれの階層は光の浸透の深さに応ずるよう、赤、緑、青の各色に対応している。他のカメラと違って、新型のフォビオンセンサーは1500万画素の一つ一つのピクセルで色の3色を測定しており、通常のカメラと比べて3倍の色の情報を持っている。それゆえシグマはSD1の画素数を4600万画素だとアナウンスしている。

通常のセンサーでは、細かく編まれた生地などを撮影した時に、演算の間違いによって偽色は発生することがあるが、フォビオンセンサーはそれぞれのピクセルで3色を記録できるので、偽色が発生する心配をする必要がない。ベイヤーセンサーはこの問題を、センサーの前面にピクセルレベルでわずかに画像をぼかすローパスフィルターを置くことで回避している。フォビオンはローパスフィルターを使用していないので、実際の画素数から考えられるよりも、遥かに精緻な画像を得ることが出来る。

以上の点から、シグマSD1はとても優れた特徴を持つカメラであり、アマチュア向けのデジタル一眼レフのカテゴリーではずば抜けた画質である。しかし、キヤノン1DsニコンD3xなどと比べると、その値段からは少々物足りないという印象を受ける。

もう一つ超えなければいけない壁は、SD1がシグマSAマウントを使用しているということである。シグマはSAマウントに向けても多くの種類のレンズを供給しているが、それらのうちいったいいくつが9000ドルのボディに見合うものなのか、疑問が残る。また、防塵防滴に対応したレンズがほとんどないことにも注目したい。これらを踏まえて、いったいどれほどの人がマイナーなマウントのカメラを選ぶのか、疑問である。


SD1の特徴

1500万画素x3のフォビオンセンサー
ISO100-6400
11点全点クロスAFセンサー
毎秒5コマ連写
46万画素液晶パネル
最高シャッター速度1/8000秒 10万回耐久
AF調節機能


ボディデザイン




SD1のボディは新しく開発されたもので、SD14/15と比べて非常に進化しており、とても伝統的なものになったと言える。二つのコントロールダイヤルとダイレクトボタンのおかげで、主要なカメラの機能は見ただけですぐに操作できるようになっている。

以前のSDでは右手親指付近に主要なボタンが集まりすぎていたが、SD1ではこれらのボタンがボディ上面にほどよく分散している。心地よい操作感とまではいかないが、ボタンがそれぞれ離れているので指で触るだけで必要なボタンを見つけることが出来る。しかし、このボタン配置によって、上面の液晶パネルがなくなってしまった。






SD1はとても軽量なカメラである。ボディはしっかりとした剛性があるにもかかわらず軽量だ。シグマの、SD1を中判デジタルの代替として売り出す、というアイデアを支持するとしたら、この軽量さは大きなアドバンテージである。手にとても良くなじみ、長時間使用したあとでもなお快適に感じるだろう。



SD1はとてもクラシカルな印象のカメラだ。動画やライブビューといった最新の機能は搭載していない。また、特殊な現像モード、例えばダイナミックレンジ拡張、HDR、3D、アートフィルター、なども搭載していない。その代わり、撮影に必要なセッティングをすぐに変更できるダイレクトボタンや、シャッター速度と絞りにそれぞれ対応できる二つのダイヤルによって、伝統的な一眼レフと同様、機能的であることに集中している。

ほとんどのユーザーが、SD1をシンプルな写真撮影用の道具として使用するだろう。一つだけ残念なことは、シャッター速度優先モードか絞り優先モードに設定した時にも、両方のダイヤルはあらかじめ設定されたパラメーターしか変更できないことだ。つまり、露出を変更するときには露出ボタンを押さなければならないということ。シャッター速度か絞りに設定した時には、残りのダイヤルを露出かカスタマイズ変更できるようにした方が良いのではないか。


SD1の側面に当然HD出力はない。DC電源、レリーズケーブル、USB/AV端子、シンクロターミナル接点と、最小限の機能しかない。



SD1はこれまで同様BP-21バッテリーを使用する。現在では撮影可能枚数は明らかになっていない。バッテリーカバーはつまみを回すことで開けることができ、周囲には防水処理が施してある。バッテリーグリップ装着時にはふたは外すようになっている。


従来同様SD1もレンズマウント前面にダストプロテクターを使用する。



右側上面には二つのダイヤルと、ISOと測光方式用のボタンがある。背面右側にはAFポイント用のボタンが一つだけで、誤操作をすることはなくなった。これまでのシグマのカメラにあった上面パネルは省略されている。右側上面にあるダイヤルは露出調整用のダイヤルで、ユーザーがカスタム設定することが可能である。全体的に広々としたボタン配置だ。

SD1にはさらにAELボタンとAFボタンがある。後者はカスタム設定が可能である。二つのダイヤルがあるカメラとしては奇妙なことに、シャッターボタンの横にある露出ボタンを押さなければ露出を変更することは出来ない。AモードとSモードのときには二つのボタンは全く同じパラメーターを操作するだけで、カスタム設定で変更することも不可能である。どうして片方のダイヤルを使用しない時に、もう片方を露出用に当てはめなかったのか全く不可解だ。


後編へ続く