SD1でシグマはマイナーから脱却できるか?



2011年3月3日

いったい世の中に何人くらいシグマの一眼レフを使ってる人がいるのか正確には知らないけれど、キヤノンニコンを使ってる人と比べるととても少ないってことは確かだと思う。写真愛好家の一人として、僕は自分の決断が正しいかどうか、ときどき不安になる。どうして僕は数あるメーカーの中で、このカメラを選んだんだろうか?

僕はメーカーの広告戦略に乗せられたこともあるし、流行やネットの記事に流されたこともある。でも、そんな中でも、別の可能性を見つけるために、新しい選択をすることをやめなかった。人生におけるいろいろな選択と同じように。もちろん、自分が慣れ親しんだことじゃない道を選ぶのは、そう簡単なことではないんだけど。



僕がシグマと出会った日

僕がシグマのSD9とSD10を知ったのは、ほんの偶然だった。もちろん僕はシグマが一眼レフを作ってるってことは知ってはいたけど、詳しく知ろうとはしなかった。シグマだけじゃなく、ペンタックスオリンパスも一眼レフを作ってるって知識はあったけど、僕自身はとある理由でキヤノンのカメラに魅力を感じていて、結局キヤノンKiss Digital Xを買った。

Kiss Xで写真を撮るのはとても楽しかった。他のメーカーのカメラは気にならなかった。なぜならキヤノンが世界最高のカメラメーカーだって信じて疑わなかったからだ。けど、「世界最高」って、いったいどういうことだろう?その時点で僕は、その意味を深く考えることはなかった。ただ単に写真を撮りたかっただけだった。

しばらくしてから僕はデジタルカメラというものについて、もうちょっと勉強しようと思った。その時点では技術的な側面について興味があったので、たくさんの記事やレビューやデータを読んで、デジタルカメラとは何なのかについて詳しく調べていった。いつだったか、ある友達が僕にセンサーのことについて質問してきたことがあって、僕は何一つ答えることが出来なかった。次の日からさっそく僕はセンサーのことを調べ始めた。そして、ベイヤーセンサーについての記事をたくさん読んでいる時に、「フォビオンX3センサー」というものに出会ったんだ。



それは驚きだった

数年前までは、ベイヤーセンサーがレンズを通った光の3分の1しか捉えられないってことを知らなかった。フォビオンX3センサーについて書かれた記事を読んでいくうちに、これは間違いなくベイヤーセンサーよりも優れているとわかって、興奮を隠しきれなかった。さっそくPBase.comにアクセスして、シグマの一眼レフで撮られた高解像の写真を探してみた。

僕はこのときのことを、まるで昨日のことのように覚えている。僕はSD9とSD10で撮られた写真を見て、その画質に驚かされたんだ。そしてそれと同時に、フォビオンの技術について知れば知るほど、そのセンサーの弱点や、どうしてベイヤーに取って代わらないのかも、わかるようになった。



それはまるで初恋のよう

フォビオンとの出会いは僕にとっては初恋のようなものだった。おかしな話だけど、僕はフォビオンの画質に恋に落ちてしまったんだ。

フォビオンの画像とベイヤーの画像を詳細に比較してみるといろいろなことがわかった。例えばベイヤーは高感度や画素数でフォビオンに優っている。シグマがフォビオンのアップデートをあまりしてこなかったのは、僕にとってがっかりすることだった。

さらに、シグマは当時も今も、フォビオンのフルサイズセンサーを発売していない。僕はいつの日か、シグマがフルサイズのフォビオンセンサーを搭載したカメラを発売することを、ずっと夢見ている。




シグマSD1

僕はずっとデジタルカメラのショーで発表される新製品をチェックし続けてるんだけど、フォトキナ2010でのSD1の発表は衝撃だった。あのときシグマがフラッグシップカメラを発表するって予測してた人は、たぶん一人もいなかったんじゃないだろうか。というのも、ネット上ではシグマはデジタル一眼レフから撤退するとさえ噂されていたからだ。

フォトキナ2010で発表された様々な新製品のニュースの中でも、シグマSD1の発表は最も興奮すべきニュースだったと思う。シグマはさらに記者会見で、SD1には新型のフォビオンX3センサーが搭載されると発表した。4600万画素の24x16mm、APS-Cサイズのセンサーだ!これはもう、完全に予想外のスペックだった。

面白いことに、この新型センサーについてはネット上でも噂すらされていなかった。たぶんシグマはこのセンサーをトップシークレットにしていたから、誰もその存在に気づかなかったんだと思う。

さて、シグマSD1の発売まであと何日か何ヶ月かわからないけど、このカメラは誰もが無視できないカメラになると思う。

これまでたくさんの人がシグマとフォビオンセンサーを、やれ、シグマのカメラは未完成だ、ベイヤーに全く太刀打ちできないだと批判してきた。確かにある部分ではフォビオンに優れた所があるかもしれない、けど今の時点では全く洗練されていない、とか。

問題なのはセンサーだけじゃなくて、カメラボディの性能もだ。最新のキヤノンニコンの一眼レフが備えている様々な機能に、シグマのボディは全く太刀打ちできない。キヤノンニコンに比べると、シグマのカメラは二世代ほど遅れているように見える。シグマが大手に着いて行くのは並大抵のことじゃないし、ベイヤーセンサーだって新しいモデルが出るたびに性能を向上させている。


シグマにとってSD1は大きな飛躍になると僕は思う。

フォビオンセンサーは1460万画素サイズにまで解像度が上がった。センサーサイズも24x16mmと拡大されたし、SD1のボディはマグネシウム合金だ。従来のカメラから性能が向上したことで、シグマがデジタル一眼レフ市場を席巻する準備は整った!と言える。まあ、そんなにすぐに状況が変わるわけではないだろうけど。

SD1は画質の点ではとても優れて見える。けど、カメラの機能としては他のライバルに遅れをとっていると思う。SD1を買うユーザーは画質最優先で、他の便利な機能は全て諦めるしかない。つまり、ちょっとした妥協が必要だってことだ。例えば、SD1には動画撮影機能はないし、最新の一眼レフのような92万画素の液晶パネルもついていない。




シグマはマイナーメーカーには留まらない

シグマはライカのようなマイナーなメーカーに留まる気はないだろうと、僕は思ってる。シグマは出来るだけたくさんの写真家に、シグマのカメラを使って欲しいと思っているはずだし、僕もそう思う。

というのも、シグマだけがフォビオンX3センサーを実用化しているからだ。他のメーカーが開発中の3層型センサーがいつ登場し、ベイヤーセンサーに取って代わるのか、誰にもわからない。何年かしたら、ベイヤーセンサーで写真を撮っていたことがどれほどバカバカしいことだったか、冗談まじりに笑い合う日が来ると、僕は確信している。

さて、時は流れる。僕は今でもSD1の発売のニュースを待ちこがれているし、早くサンプル画像を見たい。もしシグマがちゃんと仕事をしたら、SD1は僕の次のカメラになると思う。それだけは、確かだ。