(独占記事)シグマとフォビオン社がSD1について語る

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(写真はフォビオンの緑色がベイヤーに対して√2倍=1.4倍、赤色に対して2倍の解像度を持っていることを示す図)

元記事
Exclusive: Sigma and Foveon discuss the forthcoming SD1
http://www.dpreview.com/news/1010/10100504Sigmainterview.asp




フォトキナ2010における本当のサプライズの一つは、シグマがそれまでの470万画素をはるかに超える、新型の1540万画素x3のフォビオンセンサーを搭載したSD1を発表したことだ。dpreviewはシグマCOOの山木氏、フォビオン社のラマスワミ氏、グトッシュ氏に開発中の新製品について話を伺った。

2011年の春に発売が予定されているSD1に搭載されている最新のフォビオンセンサーは、4600万個のセンサーからなり、1540万画素の解像度でフルカラー画像を作り出す。しかし両社によると実際の開発は2年前から始まっていたそうだ。



「フォビオン社は我々が買収しようとした時には別の製品を開発中でした。実際に子会社化したあとで新型センサーの開発を始めたのです」と山木氏は説明する。「次のセンサーに高解像度が必要なのは明白でした。私たちは最高の画質を、最高の解像度で提供出来るようになりたかったのです。シグマのカメラの愛用者は繊細な色とシャープな画像を好んでいます。現行のセンサーで作り出した画像を拡大表示しても十分奇麗に見えますが、やはり解像度をもっと上げる必要がある事は承知していました」

「私たちはそれまでに携帯電話のセンサーを開発していたので、フォビオンのピクセルを小さくする事が可能だとわかっていました」とフォビオン社のグトッシュ氏は説明する。「この経験から、私たちはピクセルサイズが小さい、高解像度のセンサーを作る事に自信を持っていました。買収交渉の過程で、私たちは開発の目標を2010年のフォトキナ定めました。それまでに大きなインパクトのあるセンサーを開発するのだと」

「それはフォビオンセンサーの利点について、もう一度良く考える良いきっかけでした。人間の視覚は緑色を最も良く感知します。ベイヤーセンサーは4つのピクセルのうち2つを緑色に充てる事で、大きなアドバンテージがあります。フォビオンセンサーは各ピクセルが緑色を感知する事が出来ますが、ベイヤー型に勝るためにはやはりピクセルサイズを同等にしなければいけません。他社のセンサーより緑色の光度情報が多いことで、より解像度の高い画像を作り出す事が出来るのです」

「私たちはこのことを知っていましたが、実際に製品にする事はなかなか出来ませんでした」と山木氏は言う。



「私たちはフォビオンセンサーを他社のセンサーと同等のピクセルサイズにすることにしました」とグトッシュ氏は言う。

「全く同じ解像度を持つベイヤーセンサーと比較して、フォビオンセンサーは緑色では√2倍の、青色と赤色では二倍の解像度を持つ事が可能です。ベイヤーが使用している画像処理プロセスでこの差は縮小されていますが、ローパスフィルターを使用しなければならないので解像度は向上しません。最大解像度で撮影しても、ナイキスト周波数によって決定される理論上の最高の画質の70%ほどしか表示出来ません。けれどもフォビオンセンサーなら100%の解像度の画像を作り出す事が出来ます」

「1540万画素x3のセンサーを作るという目標を、最初に立てました」とフォビオンのラマスワミ氏は言う。開発チームは1540万画素x3の数字は十分なインパクトを与えると自信を持っていた。「他社のセンサーがどこまで進歩していくのかを推測するのはとても難しかったのですが、過去の流れを見て、私たちの予測の範囲内で進歩を続けるだろうと思っていました。多少予測よりも遅れるとしても、それほど大きく停滞はしないだろうと」



「私たちが開発していた携帯電話用のセンサーは大きな挑戦でした。それを大きなセンサー用に開発するのは技術的にはさほど困難ではなかったのですが、画質やダイナミックレンジをふさわしいものに向上させるのはとても難しい作業でした」

「それまでの1.7倍のセンサーから1.5倍のAPS-Cサイズへ拡大したのはこのためです」とラマスワミ氏は言う。「私たちはピクセルサイズを必要以上に小さくはしたくなかったのです。大きすぎず、小さすぎないサイズが必要でした」

「理由は簡単です」と山木氏は言う。「画質こそが、一番の優先課題だからです。シャープな画像とディテールを失わないこと。これこそがシグマの製品を使う人が最も求めていることだからです。もちろん、ダイナミックレンジやノイズの減少もとても重要ですが」

「けれども、センサーの設計は開発の一部に過ぎません」と山木氏は強調する。

「開発の段階で2つの困難がありました。センサーの改良と、画像処理エンジンの改良です。新製品は過去の製品と比べてダイナミックレンジの面でもノイズの面でも必ず向上させると保証します。けれども、それがどの程度までか、ということは今の段階では言う事は出来ません。現在のシグマユーザーは他のカメラのユーザーとは違い、クリアでシャープなフォビオンの画質を求めています。画像のティテールをなくせばノイズを減らす事ができるのですが、私たちはそれはやりません。それはノイズ対策をしないということではありません。もちろん改善を続けます」



「私たちのカメラは現在市場に出ている他の一眼レフと、競争が出来る位置にいる必要があります」とグトッシュ氏は言う。

デザイナーにとってセンサーから出力される画像の画素数は重要だ。データの読み出し速度は、連写性能だけでなく、滑らかなライブビューや、DPシリーズのようなミラーレス方式での素早いコントラスト検出式オートフォーカスにとっても重要である。

「センサーの回路を設計している開発チームにとって、データの読み出し速度はもう一つの困難でした」とグトッシュ氏は言う。「彼らは電源供給、データの読み込み構造、ADコンバーター、その他の、CMOSセンサーの読み込み速度の改善に必要な、あらゆる部品の再設計をしました。私たちは新型のセンサーは現在の基準から見ても十分な性能だと自信を持っています」



「新型センサーはこれまで使っていたセンサーとはとても異なっています。ピクセル構造から全く異なった、別物です」と山木氏は強調する。

残念ながら、この高速の読み出し速度はビデオ機能のためには使われない。「SD1にはビデオはありません」と山木氏は言う。「私たちはビデオを付けるかどうか、今後のモデルで検討することになるでしょう。現在はやるべき事がたくさんあり、その中で優先順位を付けなければいけません。現在のシグマユーザーは静止画の画像の質にとても敏感であり、それゆえ、最優先事項は最高の静止画像を提供する事です。おそらく次の世代かもう一つあとの世代のカメラが、最高の動画を提供出来るのではないでしょうか」

彼らによると、フォビオンの動画は待つ価値があるそうだ。「ビデオはとても特別なものになるでしょう」とラマスワミ氏は言う。「ピクセルの数は決まっていますから、もしフォビオンのフルHD動画を見たら、ベイヤー型で作られたビデオではとても太刀打ち出来ないとわかるでしょう」



単純に、やらなければならない事がたくさんある、と山木氏は説明する。「ベイヤーセンサーは次々と新しい改良を実装していく事が出来ます。けれども、フォビオンはわずか三世代目のセンサーで、しなければいけない事がたくさんあります。フォビオン社を子会社化したあとでは、私たちは開発の目標を立てる事が出来ました。それなので開発のスピードは以前よりも早くなっています。現在の時点では、改良をさらに加速するために、私たちはハイアマチュアとハイエンドのカメラに集中しています」

グトッシュ氏はこの集中は適切だと語る。「私たちがデジタル一眼レフ市場に集中しているのは、この市場こそが私たちの製品を受け入れてくれるからです」



開発を外部委託している他の多くのメーカーとは違って、シグマはカメラの開発を、外部から調達したいくつかの部品を除いて、ほとんど自社で行っている。「AFセンサーはある半導体会社と協力し、また、ある部品会社からAEセンサーを買いました」と山木氏は言う。これは他の大手カメラメーカーから買ったということを意味しない。「カメラ産業はとてもとても専門化しています。部品会社は私たちのカメラ専用の部品を供給してくれます。他の大手メーカーとは協力していません」

カメラを自社生産するという方法は、会社にとって自社で顧客の要求を満たさなければならないというプレッシャーを生む。「私たちは来年の春に新製品を発売出来るように努力していますが、まだ発売時期を発表することは出来ません。生産能力に見合うように発売時期を変えるかもしれません」



シグマ社だけではなく、フォビオン社もやらなければならない仕事がたくさんある。「画像処理技術というのは常に継続して進歩し続けるものです。けれども、開発のある時点で、それを製品にしなければならない。一つのセンサーが出来たからそれを使うカメラを作る、という単純な話ではありません」とグトッシュ氏は言う。けれども、やらなければいけない事がたくさんある事は、もちろん利点がある。「単に作った製品をメーカーに渡すだけの仕事よりも、最終ゴールに向かって常に開発を続けられるという事は、チームにとってより満足感が高いです。フォビオンの社員はシグマの社員と同様に、写真に対してとても大きな情熱を持っています」

山木氏が続く。「私たちは写真に集中する事が出来てとても幸運だと思っています。写真のために働きたいとやってきた技術者が、会社で働いてくれています。彼らは私たちがカメラとレンズだけを開発してるとわかっているので、必然と写真に対して情熱的な技術者が会社に集まってくるのです」