CP+2012 山木社長インタビュー

 
ジェフ:山木さん、この度はお父さまの道広氏がお亡くなりになられましたこと、謹んでお悔やみ申し上げます。道弘氏はシグマにとってだけではなく、日本のカメラ産業全体にとってもなくてはならない方でした。新しいCEOとして、山木さんが今後もシグマを発展させていけることを願っています。
 
山木:私では父と同じようには出来ないかもしれませんね。
 
ジェフ:山木さんなら大丈夫です。さて、CP+の話にいきましょう。つい先日シグマがSD1の値段を大幅に下げたSD1メリルを発売するという発表がありました。どうしてこのようなことが可能になったのか、理由をお聞かせ願えますか?
 
山木:ええ、改定した値段というのは実のところ、最初にSD1を出すときに目標にしていた値段なのです。しかし、センサーの歩留まりがとても悪く、最初の設定のままでは発売できなくなってしまいました。昨年からシグマとフォビオンの技術者が協力して歩留まりの改善に取り組んでおり、ようやく最初の設定どおり発売できるという自信を持てました。値下げはその結果です。
 
ジェフ:もうすでにSD1を買ってしまった顧客に対してはどう対応するのでしょうか?
 
山木:私たちはSD1を買ってくれた方々をロイヤルカスタマーとしてとても大事だと考えています。私たちを信頼して、あの値段にもかかわらず購入していただきました。現在、ロイヤルカスタマーへ補償するためのプログラムを準備中であり、詳細は今月中に発表したいと思います。
 
ジェフ:それ以外にもSD1のセンサーを利用した新しいDPシリーズが発表されました。この新しいDPシリーズについて教えていただけますか?
 
山木:コスト削減に成功したので、私たちはこの新しいセンサーをもっと多くの人に使っていただきたいと思います。この新しいDPシリーズは単にSD1のセンサーを搭載したというだけでなく、画像処理エンジンも二つ搭載していますので、センサーから生み出される大量のデータを高速に処理することができます。さらに92万ドットの3インチ液晶と、新開発のレンズも搭載しています。
 
ジェフ:デュアルプロセッサーということは、レスポンスが高速で快適に使えるということでしょうか?
 
山木:センサーが出力するデータは4600万画素ですので、それの処理だけで相当の負荷がかかってしまいます。
 
ジェフ:なるほど。では話題を変えて、レンズについてうかがいます。シグマはつい先日ミラーレスカメラのマイクロフォーサーズソニーNEX用に新しいレンズを発表しました。この新しいレンズについて、そしてシグマのミラーレス市場での今後の展開について、お話をうかがいたいのですが。
 
山木:新しく発売される19mm F2.8と30mm F2.8のレンズは新型のDPに搭載されているレンズと同じ設計思想で作ったレンズです。もちろん、全く同じというわけではないのですが、写りには期待してほしいですね。
 
今後のことですが、実はミラーレス市場でどのような製品を出すのか、まだ細かくは決まっていないのですよ。一つ言えることがあるとするなら、私たちの製品というのは常に、キヤノンニコンソニーといった大手メーカーの製品と、ユーザーとの間にあるギャップを埋めるものだということです。それなので、ミラーレス市場でも私たちの役割は変わらないと思いますね。現在は私たちもメンバーの一員であるマイクロフォーサーズソニーNEXに対してレンズを出していく予定です。おそらくペンタックスQにはレンズを出さないでしょう。ニコン1についてはまだ確かなことは言えません。
 
ジェフ:シグマがたくさんのラインナップを持つレンズメーカーであると同時に、SDやDPといったカメラを作っているというのはとても興味深いですね。そうなると、シグマ自身がいつミラーレス市場に参入するのかとても興味があります。マイクロフォーサーズや他のマウントで参入する予定はあるのですか?
 
山木:私自身も個人的にミラーレス市場には興味ありますし、私たちにはミラーレスを作るだけのノウハウもあります。問題なのはタイミングですね。現在は最初に私たちのカメラを受け入れてくれたSDユーザーと、私たちのカメラが普及するのを助けてくれたDPユーザーに対してもっと恩返しがしたいという気持ちの方が強いです。もう一つラインを増やしてミラーレス市場に参入するためには、私たちがSDやDPのユーザーに対して十分なサポートができてると判断することが必要不可欠です。
 
ジェフ:現在の顧客を大事にするシグマの姿勢は素晴らしいですね。インタビューを受けていただきありがとうございました。ますますのご活躍を期待しています。
 
山木:ありがとうございました。