(CES2012)山木社長インタビュー(dpreview)


今年のCESのシグマのブースは決して広いものではなかったが、この日本のレンズメーカーには展示するものが山ほどあるようだ。その中でも特に注目なのが三本の新しいレンズ。マイクロフォーサーズソニーEマウント用の19mm F2.8と30mm F2.8、そして一眼レフユーザーに魅力的な180mmマクロレンズである。

私たち(dpreview)はシグマCOOの山木和人氏にシグマの新型レンズについて尋ねた。また、昨年の震災と、混迷を深める世界経済の影響を受けて、シグマがどのように困難に立ち向かっていくのか、話をうかがった。

DPR:まずはつい先日発表されたDN(Digital Neo)レンズの19mmと30mmについて話を聞かせてください。これはミラーレスカメラ専用のレンズですよね。これまでに発売されたミラーレス用のレンズと比較すると少し大きいのではないかという印象を持ったのですが。

山木:パンケーキレンズや単に明るいだけのレンズを作る気はありませんでした。私たちは最先端の技術をこのレンズに使用しています。ユーザーの方には何よりもまず画質を評価してほしいですね。また、今回新たに開発したリニア方式のAFモーターを採用しています。これによって従来のモーターと比べて、ビデオ撮影時のAF駆動音を限りなく低減させることができました。

DPR:カメラに内蔵されているマイクだけを使っているようなアマチュアには、AF音が小さいというのはとても役に立ちますね。値段はどれくらいになりそうですか?

山木:まだはっきりとは言えませんが、新技術を使っているからといって、それをそのまま値段に反映させたりはしません。19mmと30mmの両方とも、既存のミラーレス用のレンズと同等の、手に入れやすい価格にするつもりです。

DPR:ミラーレスカメラのユーザーはどのような客層なのでしょうか?一眼レフのユーザーと比較して何か違いはありますか?

山木:ミラーレスのユーザーには二種類いると思います。初心者と、ハイアマチュアですね。初心者のユーザーは新規にレンズを購入することがあまりないので、私たちはハイアマチュア向けに製品を作っています。ハイアマチュア向けのミラーレス市場が今後一番伸びていくのではないでしょうか。

デジタルカメラの中では、今後も一眼レフタイプのカメラがハイエンドであり続けるだろうと思っています。光学ファインダーがあるとやはり違いますから。けれども、個人的には将来かなりの数のハイエンドカメラがミラーレスタイプになるのではないかと思います。

DPR:ハイエンドのミラーレスが増えるのですか?

山木:そう思います。その理由のひとつはAFです。コントラスト方式のAFの方が位相差式よりも精度が高いからです。位相差式で正確にAFするのは大変ですし、センサーの画素数が増え続けているので、今後はもっとAFが困難になるでしょうね。

DPR:シグマのフラッグシップであるSD1についてうかがいます。正直申し上げて現在のSD1に対するユーザーの反応はあまり良いとは言えないと思いますが、それについてはどう思われますか?

山木:そのことについては私たちも十分認識しています。しかしSD1はフォビオン社を買収してから最初に開発をしたモデルであり、現在も改善を続けています。

私たちのカメラはある意味で人を選ぶカメラだと思っています。そのような意味で、シグマのカメラは多くの人に幅広く売れるカメラではないのかもしれません。

私たちが自社のカメラのセンサーにフォビオンを選んだのは、他社とは違うカメラを作るためです。そのためには全てをゼロから作り上げる必要がありました。他の大手とは違い、大量の技術者を抱えてるわけではないので、何もかもを一度に達成することはできません。それなので、どうしても一つ一つのことに集中せざるを得ないのです。

DPR:シグマの次のモデルはどのようなものになるのでしょうか?

山木:次のモデルは今までよりも、もっと良いものになるだろうと思います。現在は次期モデルに向けて製造コストをできるだけ下げられるよう、努力しているところです。私自身、シグマの熱心なユーザーが、価格のせいでSD1を買えないという状況を心苦しく思っていますので、コスト削減には全力で取り組んでいます。将来、必ず手に入れやすい価格でカメラを提供することを約束します。

DPR:2011年はカメラ業界にとって厳しい一年でした。とりわけ日本のメーカーにとってはそうだったと思います。シグマにとっての2012年の課題は何でしょうか?

山木:私たちは日本に工場を一つしか持っていません。工場は震源地に比較的近かったのですが、幸運にも大きな被害を受けることなく、現在は通常通り操業をしています。

現在最も懸念しているのは経済状況、特に円高です。私たちは製品の全てを日本国内で製造していますが、売り上げの80%はヨーロッパ、イギリス、そしてアメリカからなのです。ヨーロッパの経済状況はとても悪く、これ以上円高が進んだら将来どうなるか、正直予測不可能です。

DPR:現在の状況にシグマは今後、どのように対処していくのでしょうか?

山木:私たちのやるべきことは単純です。より多くの製品を開発し、より品質の高いものを提供することです。

私自身、作ってみたいレンズのリストは山ほどあります。他のメーカーは定番のレンズを作っていればそれで十分だと思っているのかもしれませんが、私はそうではありません。シグマには交換レンズ市場で新しいカテゴリーを作る能力がありますし、これまでもそうやって市場を切り開いてきました。デジタル一眼レフの画素数は増え続けているので、高性能なレンズへの需要は常にあります。それはつまり、私たちにチャンスがあるということですから、シグマはそれをひたすら追求していくだけですね。